現代の採用活動において、SNSの活用は重要な採用戦略の一つです。中でもX(旧Twitter:以後本記事ではXと記載)は、その即時性と拡散力から多くの事業所で採用に役立てています。本記事では、Xを活用した採用の基本から具体的な手法、医療・介護事業所がX採用を実施するなら、どうするべきか等を解説します。 Xを利用した採用Xとは?Xは、2006年にサービスを開始し、2024年4月1日~6月30日の公式発表データとして、1カ月間当たり約5億7000万人がXを利用しているとのことです。日本国内でも6000万人以上が利用しており、特に20代から30代の若い層に人気のプラットフォームですが、40代で約45%、50代でも約34%の利用者がいるなど、幅広い層が利用しています。Xの大きな特徴は、その即時性と拡散力です。ポスト(ツイート)は瞬時にフォロワーや関連アカウントに届き、関心の高いポストはリポスト(リツイート)機能により短時間で広範囲に拡散されます。また、ハッシュタグを用いることで、特定の話題に関心を持つユーザーにアプローチすることができます。しかし、140文字という制限があるため、簡潔でインパクトのあるメッセージを伝える力が求められます。最近では採用にも使われていて楽天グループ株式会社やSBCメディカルグループ湘南美容クリニックなどの有名企業も採用でXを活用しています。Xの強みリアルタイムな情報発信 X(旧Twitter)の最大の強みは、リアルタイムで情報を発信できる点にあります。採用で使う場合、求人情報や事業所のイベントなどを即座に求職者に届けることができ、タイムリーな情報共有が可能です。例えば、新しい求人募集を開始した際には、すぐにツイートで告知することで求人の認知を広げることが可能になります。さらに、緊急の募集だけでなく事業所説明会や見学会の告知など、リアルタイム性が求められる状況においても非常に有効です。広範なリーチ Xは、その広範なリーチ力も特長です。Xにはリポスト(リツイート)という特有の拡散を促す機能があり、リポストされた場合には投稿した情報がフォロワーのフォロワーにも拡散され、短期間で広範囲に情報を届けることができます。例えば、フォロワー数が1,000人のアカウントがリツイートすると、その1,000人のフォロワーにも求人情報が届く可能性があります。これを繰り返すことで、瞬く間に数万人に情報が広がることもあります。また、ハッシュタグを活用することで、特定の業界や職種に興味を持つユーザーにリーチすることができます。例えば、「#介護士募集」「#看護師採用」といったハッシュタグを付けることで、これらのキーワードを検索するユーザーに情報を届けることが可能です。ハッシュタグを利用したツイートは、利用しないツイートに比べてエンゲージメント率が高くなる傾向があります。例えば、Xの調査によれば、ハッシュタグを使用することで個人アカウントでは約100%、事業所アカウントでは約50%エンゲージメントが向上することが示されています【参考: X Best Practices for Journalists】ハッシュタグは様々なSNSに採用されていますが、リポスト機能はXならではの特長であり、短期間で多くの人にリーチするために有効な機能となります。他SNSとの違い・テキストがメインInstagramやTikTokが画像や動画で投稿しなければならないのに対し、Xは短文での情報発信が可能です。なので、画像や動画を作成するスキルを必要とせず、誰でも簡単に投稿ができます。特に、医療・介護業界は現場での仕事も忙しい中で運用をしないといけないため、テキストのみで簡単に投稿できるのは嬉しいポイントです。ただし、有料にしないと140文字の制限がかかるので、短文で伝えたい事を伝える必要があります。・リアルタイム性に優れている瞬時に情報を拡散でき、知ってほしい情報を迅速に求職者に伝えることが可能です。特に、急募案件や会社説明会、見学会、イベント情報の拡散には非常に有効です。・フォロワーとの直接的なコミュニケーションリプライというコメント機能を通じて、求職者や同業の方々など、幅広い方と交流を図れます。他SNSよりもコミュニケーションが活発で、DMなどを送らずとも交流を行うことができます。このように、Xは特有のメリットとデメリットがあるため、効果的に活用するためには、他のSNS媒体との違いや特長を理解し、適切な戦略を立て、自社の採用活動に最適な方法を選ぶこと大切です。Xを活用した採用活動の始め方ステップ① 採用ターゲットを決めるまず、Xを通じてどのような人材にリーチしたいのかを明確にすることが重要です。ターゲット層がXを使用しているかどうかを確認し、それに基づいて戦略を立てます。例えば、20代から30代の看護師や介護福祉士をターゲットにする場合、彼らがよく検索するキーワードや関心を持つ話題を調査し、それに合わせたコンテンツを準備します。50代以上の方がメインターゲットの場合には、ハローワークなどの従来の採用手法がより効果的である可能性があるため、Xではなく他の手段を選ぶことを検討しても良いと思います。ステップ② 運用体制を決めるXの運用体制を決めることも重要です。SNS採用は効果を出すまでに継続した運用が求められるため、SNS担当を専任で置くことの少ない医療・介護業界では、誰がどの範囲まで担当するのかを明確にしておくと運用が楽になります。スタッフにSNS運用を任せる場合は、少額のSNS手当を出す事業所もあります。運用体制を決める際には、投稿作成と素材集め(写真撮影など)の担当を分けるのか、一緒にするのかだけでなく、チェックする人材やコメントやDMの返信を誰が行うのかを決めることも重要です。ステップ③ 発信する内容・頻度を決め、必要な素材を集める採用ターゲットが興味を持つ内容や事業所の魅力を効果的に伝えるための投稿内容を検討します。例えば、事業所について知らないけれど転職先の候補として興味をもっている求職者がいた場合、事業所の中身を知りたいと思うため、事業所の日常風景やスタッフの紹介、業務の様子などを投稿することで、求職者に職場の雰囲気を伝えることができます。また、テキストだけでは伝わりにくい場合は、写真や動画を活用することもおすすめです。加えて、定期的な投稿を維持するために、投稿計画を立て、必要な素材を事前に用意しておくことが効果的です。看護師や介護士の専門性や事業所の想いなどを伝えるために、患者さんやご利用者さんとの触れ合いや実際のケアの現場を投稿するのも良いでしょう。その際、事前に許可を取らないとトラブルになりかねないので、写真や動画に映る患者さんやスタッフには、SNSで発信する前に写真の使用許諾を取ることが大切です。ステップ④アカウント作成・作りこみ次に、Xでアカウントを作成します。アカウント作成時には、プロフィール画像や自己紹介欄を充実させることをおすすめします。プロフィール欄はアカウントに訪れた人が、一目でどういう事業所なのか分かるようにすると良いでしょう。事業所名や住所はもちろん、事業所形態やアカウントの説明を入れることで、見てもらいたい人にしっかりと見てもらう機会の創出につながります。また、Xではこれまでのポストを最上部に固定する機能があります。そこに最新の求人情報を掲載することで、求職者がアカウントを訪れた際、求人情報をすぐに確認でき、応募率を上げることにつながるのでおすすめです。あまりイメージが湧かない場合は、以下のような内容を参考にしてみてください。ーーー地域密着型の介護施設で一緒に働く仲間を募集しています!未経験OK、初任者研修以上、年齢不問!〇〇(施設名)の魅力①充実した福利厚生②子育てと両立できる働き方③未経験でも安心なフォロー体制ご興味のある方はDMかフォームよりご連絡ください!〈サイトリンク〉ーーーステップ⑤ 応募への導線を設計する求職者がXのアカウントを見て、応募したいと思った時に、すぐに応募できるように、アカウントに採用サイトを接続します。プロフィール欄には「応募はこちらから👇」と採用サイトや応募フォームのリンクを設定し、求人情報の投稿には応募フォームへのリンクを記載します。求職者が興味を持ったときに迷わずスムーズに応募できるようにすることが導線設計において重要です。また、LINE公式アカウントに応募を統一している場合は、LINEの友達URLを記載するのも良いでしょう。逆にどこにも応募導線が設計されていない状況だと、求職者が戸惑ってしまい、調べてるうちに結局応募にたどり着かないといったことも発生します。そのため、Xで応募を獲得したい場合には、どのように応募をしたら良いのか、それはどこから移動すればいいのか、そういった求職者の疑問を少しでも減らせるようにすることが大切です。ステップ⑥実際に投稿を作成し、投稿する準備が整ったら、実際に投稿を作成し、Xで投稿を開始します。投稿前には内容を確認し、間違いがないかチェックします。また、投稿後に見せたい形で反映されているかも確認し、特にXでは文字数制限があるため、内容を簡潔にまとめることが重要です。SNSはスマホで見る方が多いため、画像や動画を投稿する際には、スマホでみてもしっかりと見やすいように表示されているか確認すると良いでしょう。もし投稿した内容が見づらければ、早めに投稿を修正し投稿し直すことをお勧めします。タイムラインに投稿が表示される場合は、多くの人が流し読みしてしまうため、見にくい投稿のままだと投稿がスルーされてしまい、見てほしい人に情報が届かないといった事態が発生する可能性が高まります。見落とされがちなポイント・エンゲージメントの測定と改善Xのアナリティクスツールを活用して、投稿のエンゲージメントを定期的に分析し、改善点を特定します。これにより、どの投稿がターゲット層に響いたのかを把握し、今後の投稿内容に反映させることができます。※エンゲージメントとは、ユーザーがポスト(ツイート)に反応した数のことです。具体的には、いいねやリポスト(リツイート)などが挙げられ、このエンゲージメントの数が多いほどユーザーの反応がよいと考えられます。・フォロワーの中身フォロワー数の増加だけでなく、実際に応募につながる関連性の高いフォロワーを獲得することが重要です。ターゲット層に関連するフォロワーを増やすことで、応募数の増加や認知拡大を期待できます。ただ、採用において求職者からのフォローを直接集めることが難しいため、採用ターゲットがフォローしていそうなアカウントや、医療・介護に関連しているアカウント(例:同業他社など)からのフォローを集めると良いと考えます。また、アカウントの運用が止まっているものや、明らかに怪しいアカウントもあるため、フォロワーが増えたという事実よりも、どういう人からフォローされているのかといった視点が大切です。・画像や動画の活用テキストだけでなく、画像や動画を効果的に活用することもおすすめです。特に求人情報を投稿する際には、求人情報をまとめた画像を用意し投稿することで、文字数に関係なく伝えたい情報を盛り込むことができるので、140字では伝えきれない事業所の魅力を発信することが可能です。注意すべきポイント・継続的な運用一時的な取り組みではなく、継続的に運用することが重要です。定期的な投稿スケジュールを設定し、長期間にわたって運用できる体制を整えましょう。アカウントをつくって2~3回投稿しただけだと、フォロワー数も少ない状況だと考えられるため、投稿があまり拡散されず期待した効果が見込めません。そのため継続的な運用ができるような仕組みをつくることが大切になります。・炎上リスクの管理発言には細心の注意を払い、差別的な表現や他者を攻撃するような内容は避けると良いでしょう。もし不安であれば、事業所の方針としてSNSガイドラインを作成し、全体に周知徹底することでリスクを抑えられます。特にSNSにおける発信に不慣れ方が運用する場合は、事前に注意点を共有しておくことをおすすめします。・文字数制限Xには文字数制限があるため、情報を簡潔に伝える必要があります。長文を投稿したい場合は、X Premium(旧Twitter Blue)の利用を検討してみてください。X Premium(旧Twitter Blue)を利用することで、文字数制限を解除でき、より詳細な情報を発信することが可能です。詳細情報については、X Premium(旧Twitter Blue)の公式ページをご参照ください。【参考:https://help.x.com/ja/using-x/x-premium】・FF比フォローとフォロワーの比率について、どちらかに傾きすぎるとアルゴリズム的にもブランディング的にも良くありません。例えば、フォロー数とフォロワー数を比較したときに、フォロー数に変に偏っていた場合、ひたすらフォローしているアカウントとみなされてしまうため、バランスの取れたFF比を心がけると良いです。具体的には、フォロー数1:フォロワー数0.7〜2.0程度が理想的だと考えられています。フォロー数が1,000人であれば、フォロワー数が700~2,000人であるとこの理想の数値になります。また、この理想の数値の範囲を維持することで、スパムアカウントと認識されるリスクが低下し、フォロワーの伸びやすいアカウントを形成することができます。・1日のフォロー、いいね上限Xには1日に行えるフォローやいいねの数に上限があります。これを超えると一時的にアカウントの制限がかかるため、適度に行うことが重要です。具体的には、1日に約400のフォロー上限となっています。【参考:現在のXリミット】フォロワーの増やし方とエンゲージメントを高めることの重要性フォロワーを増やし、エンゲージメントを高めることは、事業所の認知度を向上させるだけでなく、アルゴリズム上で高評価を得ることができます。これにより、様々な人のタイムラインに表示されやすくなります。また、エンゲージメントが高まることで、事業所の投稿がより多くの人にリーチしやすくなり、事業所の認知拡大にも役立ちます。具体的な方法フォロワーの増加やエンゲージメント率向上には、質の高い発信が欠かせません。まずは、求職者が興味を持つような情報を提供し、リポストやいいねを促すことが重要です。また、求職者から直接いいねなどをもらうのではなく、関連アカウント(同業他社など)からのエンゲージメントを向上させるには、事業所でのイベントや、業務での嬉しかったことなど共感を生む投稿がおすすめです。その他の方法としては以下のようなものがあげられます。フォロワーとの交流 リプライやダイレクトメッセージを通じて、フォロワーと積極的に交流します。積極的な交流を図ると、フォロワーからの認知や好感度が上がり、投稿に反応してもらいやすくなります。また、求職者から質問が来た場合、しっかりと対応することで求職者と事業所との間で信頼感を高めることにつながります。特に、選考に関する質問や事業所に関する質問に対して丁寧に回答することで、事業所理解を深めてもらえます。ただ、求職者もプライベートで使っているアカウントを用いて、投稿に対するコメントで選考に関する質問をすることは少ないので、匿名で質問できる以下のようなサービスを活用して、求職者が気軽に質問できるようにしておくのも良いでしょう。・マシュマロ:https://marshmallow-qa.com/・質問箱:https://peing.net/ja/積極的なフォロー 関連しそうなアカウントには、積極的にフォロー活動を行うと、フォローが返ってくることで、フォロワー増加を狙えます。また、医療・介護業界の専門家や組織をフォローすることで、最新の情報をキャッチアップしつつ、フォロワーを増やすこともできます。XPremium(旧Twitter Blue)の概要と採用におけるメリット概要XPremium(旧Twitter Blue:以後本記事ではXPremiumと表記)は、Xが提供する有料サブスクリプションサービスで、ユーザーに追加機能を提供します。2024年6月時点での料金はプレミアムプラン(980円)で、上位のプレミアムプラスプラン(1960円)だと広告を非表示にできます。XPremiumの主な特徴として、文字数制限の解除、ツイートの編集機能、カスタムアプリアイコン、カスタムナビゲーションバー、広告の削減などがあります。特にツイートの編集機能は、誤字や表現の修正が容易になるため、情報発信において非常に便利です。採用におけるメリット求人の掲載が可能XPremiumを利用することで、通常のX(旧Twitter)ではできないプロフィール欄に求人掲載が可能になります。これにより、求職者がお仕事を探している際に、目に付きやすくなり、応募率を向上させることにつながります。文字数制限なく発信が可能X Premium(旧Twitter Blue)の最大の魅力は、文字数制限の緩和です。通常のツイートでは140文字以内で情報を伝える必要がありますが、XPremiumではこの制限がなくなり、より詳細な情報を提供することができます。これにより、事業所の魅力や具体的な仕事内容、社内文化について詳しく説明することができ、求職者に対して強いアピールが可能です。成功事例から学ぶX採用成功事例紹介医療・介護業界においても、Xを活用した採用活動が成功を収めています。ここでは、具体的な成功事例を通じて、その効果的な活用方法を紹介します。SBC様SBCメディカルグループのXアカウントは、中途採用と新卒採用の二つに分かれています。どちらのアカウントも質問箱を有効に活用して、求職者が選考や事業所に関して質問しやすい環境をつくり、積極的な交流を図ることに成功しています。投稿内容としても、インフォグラフィックを活用した会社の情報発信や、選考開始のお知らせなど採用にまつわる情報を幅広く発信しています。新卒採用アカウントに関しては、1万人以上のフォロワーを獲得しているため、一つの参考としてアカウントを覗いている見ると勉強になるポイントが見るかるかもしれません。亀田総合病院様亀田総合病院のXアカウントは、病院の最新情報やイベント告知、医療ニュースを発信し、特に採用情報も提供しています。病院内の出来事や医療スタッフの紹介、患者へのメッセージに加え、採用情報や職場環境についても投稿されています。また、医療スタッフのインタビューや職場の雰囲気が分かる動画や写真もあり、求職者にとって働き方や職場環境を具体的にイメージしやすくなっています。採用イベントや説明会の告知も行われ、応募を検討する人にとって重要な情報がタイムリーに提供されます。Xにおける採用に関する最新動向とXhiringの特徴最新動向X(旧Twitter)は、近年多くの新機能を追加し、採用活動にも大きな影響を与えています。その中でも特に注目すべきは「Xhiring」という採用に特化した新しい機能です。Xhiringは求人サイトのように求人を投稿することが可能であり、求職者はXhiringの中で自分の条件に合う求人を探すことができます。簡単にいうと、Xの中に求人サイトができたという認識で大きく外れないかと思います。利用料金と導入時期Xhiringの利用料金は、ベースプランで月額約157,000円です。この料金には、求人情報の投稿、応募管理、データ分析などの基本機能が含まれています。現在、一部の地域でテスト運用が行われており、今後さらに多くの地域で利用可能になる予定です。Xhiringの導入により、採用活動を強化することは今後可能になってくるかと思いますが、まだ日本では本格的に始動していない状態でかつ、現状価格が高いので、まずはXPremiumから始めてみることをおすすめします。まとめこれまで、Xの採用に関して詳しく解説してきました。Xは、140字という文字の制限があるものの、即時性と拡散性という強みがあり、幅広い求職者に採用情報を届けることができるので、従来の採用方法だけでなくXを取り入れみるのはいかがでしょうか。また、ここまでXの採用を取り入れてみてはいたが、効果があまり実感できなかった事業所の方々にも本記事の内容が参考になり、X採用のお役に立てれば幸いです。Xの採用に関わらず、採用でお困りなことがございましたら、無料相談も受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。