今回はリファラル採用について解説していきます。特に医療・介護業界などの職員同士のつながりが強い業界において、このリファラル採用は人手不足を解消していくための一つの手段として、とても有効であると考えられています。看護師は特に、同じ専門学校を卒業した知人とは長く関係を続けるケースが多く、リファラル採用に適しています。介護士やリハ職もこれまでの職場で関わってきた人と関係を築き、リファラルに繋がるケースもあります。そこで今回は、リファラル採用についてメリットやデメリットを交えながら解説していきます。WELLNOVAでは「看護師採用を改善したい」「人材紹介や有料求人媒体を減らして採用コストを抑えたい」事業所さまに、看護師採用の現状分析、採用戦略立案、実行・改善までを一気通貫でご支援しています。看護師採用に関するお悩みは、ぜひお気軽にご相談ください。→サービス紹介資料の無料ダウンロードはこちら1. リファラル採用の目的・定義リファラル採用とは、既存の従業員や従業員の知人からの紹介によって新しく人材を採用する方法のことを指します。リファラルという言葉は「紹介」や「推薦」といった意味です。リファラル採用の目的は、人材紹介会社や求人サイトに頼ることなく、組織と従業員もしくは従業員同士のつながりを利用して、質の高い人材の確保、マッチングの精度向上を実現することです。被紹介者は従業員の知人であり、採用前からすでに一定の信頼がある状態のため、組織が求める人材の確保が期待できます。2. リファラル採用と縁故採用の違いリファラル採用と似たもので縁故採用があります。2つとも既存の人脈を活用して新しく人材を採用する方法ですが、採用の対象が異なるという点も存在します。まず縁故採用は、親族や友人などの身内や知人を採用することを指しますが、リファラル採用は、既存の従業員や従業員の知人からの紹介によって新しく人材を採用することを指します3. リファラル採用が増えた背景リファラル採用が導入されるようになった背景には、競争が激化する人材市場において、優秀な人材の確保が難しくなってきていることがあります。少子高齢化によって労働力人口が低下しており、人材の確保や採用にかかるコストの増大が大きな課題です。特に看護師、介護士の有効求人倍率は高く推移しており、この先好転するといった希望を持つことは中々難しいのが現状です。こうした状況の中で、既存従業員からの紹介という形であれば、初めから一定の信頼がある状態での採用が可能になります。既存従業員のネットワークを活用し、質の高い人材を確保する手段の一つとしてリファラル採用を導入する事業所が増えています。4. リファラル採用のメリットリファラル採用のメリットについて大きく4つに分けて解説していきます。4-1. 採用コストや工数の削減につながるリファラル採用は、一般的な求人広告や選考プロセスに比べて費用対効果が高いです。既存の従業員からの紹介であるため、採用広告費や外部の業者への支払いコストを抑えることができます。特に人材紹介を利用した場合、看護師1人の常勤採用で90万円~100万円ほどかかるケースが多いため、リファラル採用は採用コスト削減に大きく影響します。また、既存の従業員からの紹介によって、選考プロセスを簡略化できるため、採用担当者の工数削減にもつながります。4-2. 転職市場外の人材も採用できる従業員のネットワークを活用するため、一般的な求人媒体や求人広告では届かない、転職市場外にいる優秀な人材を発見できる可能性があります。もちろん、ハローワークやナースセンター、インディードなどに掲載すれば多くの層にアプローチができます。しかし、普段そういった求人サイトを見ない方もいます。あまり転職に熱心でない場合でも、友人や知人からのおすすめだと、興味を持ってくれるケースがあります。自社に興味を持つきっかけが求人広告や紹介会社からの提案ではなく、知人からの紹介である場合、より興味を惹きやすいメリットがあります。実際に自分から行動するまではなくとも、もともと医療・介護業界に興味があった方や紹介されたことで事業所に興味を持った方など、通常の選考プロセスではアプローチできないような属性の人材の採用も期待できます。4-3. ミスマッチや早期離職のリスク低減被紹介者は従業員の知人であるため、ミスマッチのリスクの低減、組織が求めている人材の確保が期待できます。紹介者は実際に働いている従業員かつ、被紹介者の知人でもあるため、自社についての情報をざっくばらんに伝えることができます。例えば、看護師であれば実際の看護業務の大変さや魅力を知人経由で候補者に伝えることができますし、他の職種でも同様です。採用前段階で、より多くの情報を伝え、それに納得した状態で入職してもらうことで、相互のギャップを減らし、ミスマッチや入職後の早期離職のリスク低減にもつながります。5. リファラル採用のデメリット続いては、リファラル採用のデメリットに関しても解説していきます。5-1. 採用までに時間がかかる従業員のネットワークを通じての採用になるため、組織が求める求職者を見つけるのに時間がかかってしまう、もしくは求職者を見つけることができない可能性があります。選考プロセスの遅延が生じてしまう場合もあるため、リファラル採用は他の採用手法と並行して用いることが良いでしょう。5-2. 不採用時のケア万が一、被紹介者が組織とマッチせず、不採用になってしまった場合、紹介者の従業員との関係性に注意を払う必要があります。当然ながら紹介した従業員は被紹介者の知人であるため、アフターフォローを適切に対応しなければ、関係性が損なわれてしまう可能性があります。不採用になった理由を明確に伝えることや感謝の気持ちを伝えることなどが重要です。また、なるべく不採用にならないようにするためにも、組織が求める人物像の明確化や一定の基準を設けた上での求職者の見極めをする必要があります。事業所はこの点に十分に注意を払い、適切なケアを提供しなければなりません。5-3. インセンティブ目的の紹介の場合があるインセンティブとは紹介者や被紹介者に支払われる対価のことです。現金支給やギフトカード支給など様々な形式があります。このインセンティブが紹介の目的である場合、被紹介者の質や志望動機の質が低い可能性があります。求職者の質を一定以上に保つためにも、事業所が求める人材はどのような人材か、インセンティブ制度は適切に設計されているかなどを事前に確認し、共通認識を持っておくことが重要です。6. リファラル採用で見るべき指標リファラル採用が順調に制度として機能しているかを効果測定するために見るべき指標について大きく3つに分けて解説します。6-1. 従業員の協力数や協力率従業員が積極的に紹介を行ってくれているかどうかを示す指標であり、実数値や協力率として数字で管理することが重要です。協力してくれている従業員の数が多ければリファラル採用が上手く回っていることを確認でき、逆に少なければ、何か問題点があると推察することができます。例えば、インセンティブ制度に欠陥があることやそもそもリファラル制度が周知、機能しているかどうかなど、その効果を検証する上で重要です。また、協力率が高ければ、組織内のエンゲージメント(組織に対して自発的に貢献する意欲の度合い)が高いことも期待できるため、とても重要な指標となります。6-2. 従業員一人当たりの紹介数従業員一人当たりが紹介してくれた人数を管理することで、リファラル採用が十分に機能しているかを測る指標となります。例えば、組織内での紹介数が多くてもすべて一人からの紹介であれば、十分にリファラル採用が機能しているとは言えません。一人一人からの紹介数を測ることで制度が機能しているかを確実に確かめることができます。また、この指標の変化から、労働条件や求める人物像などが適切かどうかについて都度、検討することができます。6-3. 応募決定率紹介された求職者のうち、実際に採用された割合であり、リファラル採用の成果ともいえるものです。採用の基準や人材要件が適切なものになっているかを判断する上でも重要なものとなります。また、良くも悪くも成果を踏まえた上での反省を行い、次につなげる取り組みをすることが重要です。何が良くて何が悪かったのか、リファラル採用した求職者は入職後、上手く組織の一員として活躍できているかなど、次に活かす取り組みをしなければなりません。7. リファラル採用を促進するためのポイントリファラル採用を上手に運用していくためのポイントを大きく3つに分けて解説していきます。7-1. 制度設計リファラル採用を促進するためには、従業員にとってわかりやすく魅力的な制度設計をすることが重要です。以下、要点になります。透明性と明確性:採用までのプロセスと報酬制度を分かりやすくし、従業員が正しく理解できるようにすることで求職者を紹介しやすい環境を整備することが重要です。報酬の種類:現金での報酬以外にも、ギフトカードや社内イベントへの招待など、多様な報酬オプションを準備することで、従業員のニーズに対応することができます。対象職種と雇用形態:対象となる職種や雇用形態を明確にします。従業員が知人を紹介したくても自社にポストがなければ紹介できません。そのため、従業員が事業所の募集枠をスムーズに確認できるようにすることやポスト外であっても別の方法がないかを検討するための体制を整えることが重要です。7-2. インセンティブインセンティブの制度設計は、リファラル採用に積極的に参加する動機を高める重要な要素です。以下、要点になります。バランスの取れた報酬:報酬額は適切なバランスを取ることが必要です。あまり高すぎると、紹介された求職者の質が低下する可能性があるため、現実的で魅力的な報酬額を設定しましょう。階層ごとの差別化:従業員の職種や役職によって報酬を差別化することで、幅広く紹介を促すことができます。成功報酬:求職者が採用された場合に支給する「成功報酬」を導入することで、より理想的で効果的な人材の紹介を推奨することができます。7-3. 効果的な社内告知リファラル採用の存在や制度について、社内で従業員全体に周知することが重要です。以下、要点になります。内部コミュニケーションツール:定例会議やメール、チャットツールなどを活用して、リファラル採用に関する情報を従業員に定期的に発信します。成功事例の共有:成功したリファラル採用の事例を共有することで、従業員が紹介することの有効性を感じることができます。定期的なリマインド:リファラル採用の促進を組織全体に定期的にリマインドすることで、従業員からの積極的な紹介を継続的に促します。8. リファラル採用に向いている事業所の特徴リファラル採用に向いている事業所の特徴を紹介します。8-1. 既存従業員の事業所への満足度が高い事業所への満足度が高ければ、従業員は自信を持って知人へ紹介することができるため、満足度向上に向けた職場の環境づくりが重要です。第一に従業員自身に知人に紹介したいと思ってもらえなければ、リファラル採用は上手くいきません。まずは従業員自身が働いていて「楽しい」「働きやすい」「紹介したい」などと思えるような職場環境を整備することが大切です。8-2. リファラル採用を施策として導入する前から、知人紹介の採用実績が複数あるリファラル採用を導入する前から、従業員が自主的に知人を紹介するケースが多いと、導入後も成功しやすい傾向があります。施策として本格的に取り組む前から、このような流れが自然にできていれば、従業員からの満足度も高く、事業所としての信頼もあると考えられるため、リファラル採用に向いているでしょう。しかし、施策として取り入れる場合には従業員からの不満のきっかけや不信感を生み出さないよう、制度設計をしっかりと行ない、全体に周知するという点に気を付けなければなりません。8-3. 組織全体で何かを行う際、従業員の協力度が高い協力的な社風が、リファラル採用の成功につながることが多いため、組織内のチームワークを重視する事業所ほど、従業員からの協力が期待できます。特に医療・介護業界においてチームケアやチームサポートといったものはとても重要視されます。個人だけではなく、組織として、チームとして今の環境を改善するためにはどうすれば良いのかを真剣に考えられる従業員が多くいることで、リファラル採用も上手くいくと考えられます。9. リファラル採用の成功事例実際に、リファラル採用を活用することに成功した法人を2つ紹介します。9-1. 成功事例①医療法人としわ会名古屋市内で、医療・介護・保育施設を運営している医療法人としわ会は、リファラル採用を活用、職員の85%が協力してくれたことで介護士の採用単価を1/3にすることができたとのこと。介護士の採用コストが1/3に!医療法人としわ会が取り組むリファラル採用成功のヒント【セミナーレポート】9-2. 成功事例②株式会社東急イーライフデザイン株式会社東急イーライフデザインは以下の3点を行うことで、リファラル採用の割合が全体の5%から12%までに引き上げることに成功。リファラル採用の強化(紹介者と被紹介者への報酬額を3万円から10万円に増額)制度の存在を打ち出すためにポスターを作成し、配布。リファラルカードを作成し、従業員に配布してもらうことでツール化。介護をやるなら「東急イーライフデザイン」へ 母集団形成昨対比220%、離職率9%を実現した採用方法-株式会社東急イーライフデザイン-10. リファラル採用に関するよくあるQ&AQ1:リファラル採用とは何ですか?A1:リファラル採用とは、既存の従業員が自身の人脈や知人を通じて新たな求職者を紹介し、その紹介に基づいて選考プロセスが進められる方法です。従業員の紹介によって、優れた人材を効果的に採用する手法として注目されています。Q2:リファラル採用の仕組みはどのようになっていますか?A2:リファラル採用の仕組みは組織によって異なりますが、一般的には従業員が求職者を紹介する→紹介された求職者の情報を評価し、採用を検討する→採用が決定した場合、従業員に報酬が与えられるという流れで進行します。Q3:リファラル採用の報酬はどのように決まるのですか?A3:報酬の内容や金額は組織によって異なりますが、多くの場合は採用が成立し、一定期間経過した際に支給されることが一般的です。報酬の金額や条件については法人のポリシーやプロセスに従って決まります。Q4:リファラル採用の際に注意すべきポイントはありますか?A4:リファラル採用においては、求職者の選定基準や評価プロセスを公平かつ一貫性を持って運用することが重要です。また、過度にリファラル採用を取り入れることは、多様性の確保や新たな視点の導入に影響を及ぼす可能性があるため、バランスを考慮する必要があります。Q5:リファラル採用と通常の選考プロセスに違いはありますか?A5:リファラル採用は通常の選考プロセスと異なる点がいくつかあります。主な違いは、従業員の紹介を通じて求職者を選考する点です。ただし、基本的な採用基準や評価は通常の選考プロセスと同様に適用されることがほとんどです。Q6:リファラル採用の影響はどのくらいありますか?A6:リファラル採用は、質の高い人材を迅速に獲得するための効果的な手段とされています。従業員の紹介によって、企業に適性のある優れた求職者が企業に興味を持ちやすくなるため、選考プロセスの成功率や品質の向上が期待されます。11. まとめ今回はリファラル採用に関して解説しました。リファラル採用は組織とマッチした人材獲得の一つの手法として広く受け入れられています。リファラル採用の成功には従業員のエンゲージメント向上や適切な制度設計が必要不可欠なため、適切な準備を行った上で活用することが重要です。メリット、デメリットを考慮しつつ、従業員のネットワークを上手に活用することで、優秀な人材の獲得が期待できるため、一つの手段として取り入れてみてはいかがでしょうか?