医療・介護事業所が継続的な成長を続けるためには、人材の安定的な採用が欠かせません。安定した採用を実現するためには、事業所運営の数年先から逆算して長期的な採用戦略を立てる必要があります。しかし、業界的には「採用担当」という役割が普及しているとは言えず、中小規模の病院でも採用が他の業務と兼務となっているケースが多く見受けられます。採用活動はやるべきことが多岐にわたり、事業所の規模や採用予算によって戦略も変わってきます。適切な採用戦略をもとに、組織として施策を正しく実行すれば、事業所の成長・発展につなげることができます。今回は、そんな事業所の成長・発展につながる、医療・介護業界における採用戦略について、戦略の立て方や注意点などを解説します。本記事と合わせてご活用いただける採用戦略チェックリスト150と、KPI参考値計算シートを作成しました。以下のリンクをクリックしていただくと2つのファイルが入ったzipファイルのダウンロードが開始されます。※個人情報の入力は不要です。※エクセルファイルとなっているので、スプレッドシートご活用の方はスプレッドシートにインポートしてご利用ください。採用戦略チェックリスト150をダウンロードする↓KPI参考値計算シートをダウンロードする↓1. 採用戦略とは事業所の発展を支える人材の採用活動において、いかにして求職者に自社を選んでもらうか、選んでもらうための戦略を指し、採用活動を進めていくにあたりとても重要になります。戦略がないと場当たり的な施策の連続になってしまい、改善点が分からず効果の出ない施策に資金を投入してしまう、といったことが起こります。年々人材獲得の難易度は上がっており、看護師・介護士に限らず今後も一層競争が激化していくことが予見されています。そのような環境でも、採用を成功させるためには、質の高い戦略と効率的で継続的な実行・改善が欠かせません。そのため、採用活動を進める前に、まずは採用活動全体の根本となる採用戦略を立てるところから始めましょう。2. 採用戦略の重要性採用戦略がなぜ重要かというと、前述の通り、採用における競争が激化していくことが見込まれているためです。少子高齢化から来る看護師や介護士の減少や、都市部への人口流出など、地域によってはお金をかけても採用ができないといった状況も起きています。そのような環境下で、戦略を持たずに採用活動を行っていると、出てきた課題や改善すべき点が分からず、競合に人材が流れてしまい、安定的な事業所運営ができなくなります。採用予算を引き上げ有料媒体でカバーしようとしても、収支が悪化し従業員還元ができなくなったことで離職が増えてしまえば、有料媒体をさらに活用せざるを得ない悪循環に陥ってしまいます。別の視点で重要性を説明するとすれば、採用活動は植物を育てるのと同じであり、採用戦略は根にあたります。「花・葉=採用の成功」を得るためには、根である採用戦略が重要といえます。植物を育てて、花・葉を付けたいのにもかかわらず、根の状態が悪いと幹も上手く育たず、花・葉は一切付きません。採用活動に置き換えれば、優秀な人材、必要な人材を採用したいにもかかわらず、採用戦略が悪い状態では、施策の実行も上手くいかず、採用は成功しません。これらの理由から、有料媒体を賢く使いつつ、無料媒体で安定的に採用を行うには、採用戦略がとても重要になります。そんな採用戦略について、順を追って詳しく解説していきます。3. 採用戦略を立案するための3ステップ採用戦略の立案は、大きく分けて①現状把握、②市場・競合分析、③採用戦略の立案の3つのステップに分かれます。また、より細かく分けると8つのステップに分けることができます。それぞれのステップは互いに影響を及ぼすため、どれかが欠けると他の部分にも影響します。例えば、採用ターゲットの設定は、施策選定や面接設計に影響を及ぼします。採用ターゲットが決まらないと、施策が上手く絞れず、面接の設計も甘くなります。つまり、採用戦略は抜けもれなく、網羅的に設計する必要があります。それぞれ詳しく解説していきます。4. 目標設定と事業所の現状把握採用戦略を立てるためには、まず現在の状況を正確に把握し、実現可能な目標を設定することが重要です。現在の採用状況や必要な採用人数、予算などを詳細に把握し、目標を考え、現状との差分を埋めるために戦略が必要となります。現状の把握が正確でない場合、目標が現状とかけ離れた実現可能性の低いものとなってしまい、結果的に思うような結果を得ることができません。現在の採用活動を定量的に把握し、採用活動を成功するための戦略に活かしましょう。この章では目標設定と事業所の現状把握について解説します。4-1. 必要採用数/事業所人数現在の事業所人数と目標となる事業所人数を計算し、差分となる必要な採用人数を割り出します。例えば、現在10名の事業所で来年には15名にしたいとなった場合、5名が必要な採用数となります。必要採用数の算出を行う上で、注意点があります。それは、現在退職しそうな人や育休産休に入りそうな人がいれば、退職・休職予定者として計算に入れることです。もし、退職・休職予定者が2名いる場合、近い将来2名減ることになるので、必要採用数が2名増えることになります。途中で起こる離職を勘案し、必要採用数を把握することが大切です。また、急遽退職する人も出てくるので、これまでの離職率も考慮し、何名採用すれば目標となる事業所規模に至れるのか正確に算出し、採用の目標を決定します。4-2. 採用スケジュールの設定採用スケジュールの設計において、必要な採用人数を算出し、年間、四半期、月間と期間を区切って設定することが大切です。年間目標だけにすると、現在の進捗が良いのか悪いのか判断がつかないため、最低でも月単位でスケジュールを立てて、「4月までに1人、5月までに3人」という形で中間目標を設定することが重要です。新しい人が入る場合、現場に教育するための工数がかかるため、可能であれば特定の月に一気に採用するのではなく、分散させて採用を行うスケジュールをおすすめします。新卒など、特定の時期に一気に入ってくるような場合は、例外となります。4-3. 年間トータル採用コストの現状と目標現在、採用にどれだけの予算を投資しているかを確認し、そこから目標とする採用コストを考えます。もし、採用必要数が例年よりも増える場合、これまでの採用予算が足りなくなることがあります。その場合、採用目標数を下げるか、採用コストを下げる必要があります。必要採用数が増えるほど、基本的にはコストも増えるため、必要採用数と予算が合わない場合は調整が必要です。採用コストを下げるためには、一般的に無料媒体の活用がおすすめです。しかし、無料媒体もすぐに結果が出るものではないため、計画的に実施する必要があります。また、無料媒体以外でも、現在利用している有料媒体を安い媒体に切り替えるという選択肢もあります。※参考記事:医療・介護業界における採用コストの削減方法4-4. 1人当たり採用コストの現状と目標現在、1人あたりにかかっている採用コストを計算します。単純な計算であれば、年間の採用コスト ÷ 年間採用数 = 1人当たりの採用コストで求められます。100万円をかけて2人採用した場合、現在の1人当たりの採用コストは50万円となります。現状が把握できたら、目標の採用コストを考えましょう。年間の採用予算 ÷ 必要採用数 = 目標の採用コストで求められます。例として、年間予算が200万円で4名採用する必要がある場合、1人あたりの目標採用コストは50万円となります。現状の1人あたりの採用コストと目標採用コストに大きな乖離がある場合、採用活動を見直し、改善する必要があります。これまで1人40万円で採用していた場合、5名採用すると単純計算で200万円かかる見込みになります。しかし、必要採用数が6名で、予算が180万円だった場合、1人に使える採用コストが30万円になります。つまり、従来の採用だと、6名採用するには240万円必要なのにも関わらず、180万円が目標予算となる場合、より効率的に採用活動を行う必要があります。まとめ & チェックリストこの章では目標設定と現状把握について解説いたしました。改めて目標設定と現状把握について、以下のことが実施できたかチェックしてみましょう。・事業所の現在の人数から必要な採用人数が把握していますか?・採用スケジュールを月/四半期/年で設定していますか?・年間トータル採用コストの現状を把握していますか?・年間トータル採用コストの目標を設定していますか?・年間トータル採用コストの現状と目標の差分を計算しましたか?・1人当たり採用コストの現状を把握していますか?・1人当たり採用コストの目標を設定していますか?・1人当たり採用コストの現状と目標の差分を確認しましたか?5. 現状の採用活動における問題の分析現状の採用活動の問題を分析することは、採用戦略を立案する上で非常に重要です。競争が激化する中、現状の採用活動の問題を分析、課題を明確にし、解決策を見つけることが必要です。採用活動を数値で分解すると、採用数、応募数、閲覧数、クリック率などの指標があります。これらの指標を分析し、課題がどのフェーズにあるのかを把握すると良いでしょう。例えば、応募数が少ない場合、求人や事業所の認知が広がっていない可能性や求職者へ上手く魅力付けができていない可能性があります。その問題が明確になると、どのように認知拡大をすればよいかや、応募意欲を醸成するかという課題を明確にできます。これまでの採用活動を分解・分析することで、課題とそれに対する解決策を見出し、採用活動のブラッシュアップが可能になります。5-1. 採用が成功するまでの全体像上記は、採用の成功=入職数を分解していった図になります。よほど特殊な採用活動を行っていなければ、上記の図に当てはまるはずなので、図を見ながら現状の採用活動の分解・分析を行ってみてください。今後の採用戦略の展開に必要な施策や改善点を見つけることができるかと思います。図のように入職に至るまでには多くの段階があり、それぞれの段階で取る施策が異なります。また、段階が多く存在するということは、それぞれの段階で施策を検討する必要があり、とても工数がかかるということでもあります。そのため、結果的に肌感覚でとりあえず認知拡大の施策を実行してしまう事業所が多く存在しているように思われます。しかし、穴の開いたバケツのように、どれだけ認知を広げても、応募を集めても、それ以降のフローに問題があれば、採用数に上手くつながりません。各段階の現状を把握し、どこに一番課題があるのか確認しましょう。この章では、それぞれの段階に分けて解説していきます。5-1-1. 入職数入職数は、内定を出して実際に内定を承諾してくれた人数となります。求人閲覧数から始まり、応募数、面接数、内定数など細かく段階によって分かれますが、最終的には入職数が目的となります。採用施策の大多数は最終的にこの数字を増やすために行うと考えると良いでしょう。そのため、どれだけ他の数字が良くても、最終的に入職数に繋がらなければ、事業所の人数が増えません。インターネット上に多くあふれている意見・主張が、認知を広げてどれだけ応募を集めるか、という部分にフォーカスされている気がしますが、他業界では、面接実施率や内定受諾率など細かい値も分析していますし、採用目標数に到達するために必要な応募数が来ていれば問題はありません。「応募はたくさん来てるのに、採用数に全然繋がらない...」とお悩みであれば、応募数以外の部分で問題が発生していないか確認しましょう。特に、面接実施率や内定受諾率に問題が発生していることが多いです。5-1-2. 内定受諾率内定受諾率は内定を出した人のうち、どれぐらいの割合の人が内定を受諾したかを示します。内定を出しても競合に行ってしまったなどで入職に至らないケースが多いと、内定受諾率が下がるといことになります。受諾率が低い場合は、選考プロセスや面接の中身を見直しましょう。例えば、採用を出すまでに長い時間がかかった場合や、面接・見学での印象が悪かった場合は内定受諾率が下がってしまいます。つまり、応募者が入職したいという気持ちにならなかったということです。もし、辞退連絡を受けた場合は、しっかりと理由を聞き、次に活かしましょう。「今後の採用活動に活かしたいので教えていただけると嬉しいです」と応募者にヒアリングを行い、どこが悪かったのか確認することで、採用活動の改善につなげることができます。5-1-3. 内定数内定数は面接を実施して、実際に採用したいと思って、内定を出した数になります。採用ターゲットとなる人材が面接にきており、面接が設計されたものであれば、面接数の値に近くなります。逆に、選考プロセスや採用活動で問題が発生している場合、面接数と内定数に乖離が生まれます。人材の質が関わってくる値でもあるので、会ってみたらイメージと違ったということは大いに発生しますが、面接数と内定数が同数になることが理想的です。採用メッセージが誤解を招くような伝わり方をしていないか、採用ハードルは適切か、常に振り返りが必要です。5-1-4. 面接通過率面接通過率は、面接を受けた人のうち、内定となった人の割合を指します。面接に通過した人の割合が少ない場合、採用ハードルや採用メッセージに問題が生じている可能性があります。採用ハードルが高すぎる場合、面接に通過する人が少なくなります。採用スケジュールを鑑みて、現在の採用ハードルが適切か見直す必要があります。また、採用メッセージに問題が生じてしまうと、採用したい看護師や介護士が来ず、結果的に不採用となり面接通過率が下がってしまいます。そのため、面接通過率を把握し、問題が起きていないか定期的にチェックしましょう。加えて、採用・不採用の理由を言語化し、蓄積することで採用メッセージのブラッシュアップや、曖昧な理由で通過率が下がっていないか確認できます。5-1-5. 面接数面接数は応募を確認し、面接調整をして、面接を実施した数になります。面接数が少ない場合、面接実施率を確認して課題を把握する必要があります。採用活動において、応募から面接に至るまでに離脱する数が多いことは非常にもったいないため、原因を調査して改善しましょう。面接が実施できないと採用に至ることはないため、日程調整に時間がかかっていないか、面接の候補日が少ないのではないか、連絡が適切でないかなど振り返りを行いましょう。5-1-6. 面接実施率面接実施率は、求人に応募が来て面接を実施した割合です。もし応募が来てから面接を実施した割合が少なければ、応募から面接までの導線に課題がある可能性があります。もちろん、偶然が重なり、応募者の体調不良や日程が中々合わず実施率が下がることがあります。やむを得ない理由での面接辞退は例外として、面接実施率を100%に近づけられるようにしましょう。応募が来た後は基本的に面接に進みますが、応募が来たからと言って全員が面接に進むとは限りません。面接の日程調整が遅くなり、他の事業所に行ってしまったり、体調不良などで進まないケースがあります。採用する側で防げるものは未然に防ぎ、改善できるような体制を整えましょう。特に、看護師や介護士は売り手市場のため、他の選択肢も多く、応募まで至ったのに取りこぼしてしまうのはもったいないです。5-1-7. 応募数応募数は、求人などを見て実際に応募してくれた人の数を指します。面接実施率が100%だとしても、そもそもの応募数が少ないと、面接数は増えません。この応募数の点については、多くの事業所で悩む点かもしれませんが、次の応募率と閲覧数に分解することで、応募数を改善するための課題を明確にすることができる可能性が高くなります。応募数に関しては、後述のKPI設計や選考プロセスの設計でも説明しておりますので、ご覧ください。5-1-8. 応募率応募率は、求人を見た人のうち応募した人の割合です。応募率が悪い場合、応募意欲を醸成するための施策が必要か、応募にあたり障害が発生している可能性があります。そのため、求人票や採用サイトを改善する必要があります。求人票や採用サイトに掲載されている内容が、看護師・介護士などのターゲットにとって魅力的に見えない場合、応募率は下がります。逆に、ターゲットに合わせた内容で作成された求人やサイトは、応募率が高くなり、結果的に採用数も増えます。そのため、求人の改善や採用サイトの改善は定期的に行い、応募率を高めるための施策を行いましょう。5-1-9. 閲覧数閲覧数は、求人や事業所ページ・採用ページを閲覧した数です。主にGoogleや各サービスの分析ツールを用いて数を割り出します。閲覧数が少ない場合は、求人や事業所の認知が広がっていない可能性が高いです。例えば、検索した際に検索結果に表示がされない、看護師や介護士が多く利用する媒体を活用していないなど、問題を分解・分析、課題を明確にして、改善策を実行する必要があります。閲覧数を伸ばすには、求人を掲載する媒体を増やすのはもちろん、SNSの活用や、外部メディアへの露出、採用説明会の実施など幅広い施策があります。採用の状況や予算に合わせて、適切な施策を選びましょう。5-1-10. 応募のしやすさ応募がしやすいようなサイト・フォーム構成になっているかを指します。定性的な指標ですが、サイトやフォームの作りが悪く、せっかくサイトやフォーム入力に進んでいても離脱してしまっている可能性があるため、常にサイト構造などのブラッシュアップが必要です。古いシステムを使用している場合、応募フォーム入力中にエラーが多く発生したり、そもそも問い合わせボタンが押せないなどの問題が発生する可能性があるため、定期的にメンテナンスと更新を行いましょう。5-1-11. 応募意欲醸成事業所の魅力がターゲットに正しく伝わって、応募したいと思ってもらえているかを指します。応募意欲を高めるためには、ターゲットが魅力に感じる採用メッセージを伝える必要があります。採用メッセージがターゲットに合っていなければ、応募意欲は高まりません。そのため、ターゲットがどのようなキーワードに興味を持つのか、どのようなポイントで事業所に魅力を感じるのか考え、採用メッセージを設計する必要があります。特に、価値観が多様化している現代では、ターゲットごとに採用メッセージをカスタマイズすることが求められます。もし、採用ターゲットとなる看護師や介護士のペルソナが分からない場合は、現在働いている従業員にヒアリングを行ってみても良いでしょう。従業員からのヒアリングだけでなく、広く情報を集めたい場合は、SNSや人材紹介の担当に聞いてみると、生の声を広く集めることができます。5-1-12. クリック率クリック率は、発信を見てURL等をクリックした割合を指します。このクリック率が極端に悪い場合は、発信の時間や場所、内容が悪い可能性があります。例えば、採用ターゲットに合わないコンテンツを発信した場合、クリック率が低くなることがあります。加えて、競合と似たようなコンテンツを配信した場合にも、競争率が上がりクリック率が低くなることがあります。つまり、発信する情報が一般的であり、興味を引くものでない場合、クリック率が低くなる可能性があるため、見てもらいたい人が興味を持つような情報発信をする必要があります。クリック率が上がらない場合、これまでの発信内容を見返し、より魅力的な情報発信をすることが必要です。さらに、投稿のタイミングや活用する媒体も重要です。ターゲットとなる看護師や介護士がよくSNSやインターネットを利用している時間帯に投稿することで、クリック率が向上することがあります。また、採用ターゲットが使用しているSNSに合わせて、発信する内容を最適化することで、より多くのクリックを獲得することができます。クリック率は、次の応募に繋がる重要な指標なので、意識して改善に取り組みましょう。5-1-13. 発信数発信数は、各SNSやホームページで採用や事業所に関する発信をどのくらい行ったかを指します。情報発信が多いほど、閲覧数が増え、求人や事業所の認知が広がる可能性があります。そのため、情報発信量を意識して、積極的に情報発信を行いましょう。発信数も闇雲に増やせば良いというものでもなく、採用ターゲットが活用している媒体で、情報発信を行う必要があります。例えば、採用ターゲットが20代の若手だった場合、新聞に求人広告を出しても効果が薄いでしょう。採用ターゲットがどのような媒体を活用し、どのような情報に触れているのか、行動を分析し適切な媒体に発信することが求められます。発信内容の質も重要ですが、まずは発信数、つまり量を意識し、その中で改善を図ることで結果的に質にもつながります。そのため、発信数は重要な指標となります。5-1-14. 発信内容発信している情報の内容を指します。発信する内容は、発信者が伝えたいことがしっかりと伝わるよう、また見た人の役に立つようなコンテンツが良いでしょう。内容が不適切であったり、読者が興味を持たないようなものであった場合、発信を見てくれる人数が減少してしまい、結果として効率の悪い発信を続けることになります。そのため、発信者は常に読者の立場に立って、興味を引くような内容を提供するよう心がける必要があります。例えば、事業所の魅力や働く人の写真、やりがいが分かるようなコンテンツだと、求職者の興味を惹くことができます。5-1-15. 発信媒体数情報を発信している媒体数を指します。情報発信の媒体は、求人サイト、SNS、ブログ、note、外部メディアなど、多岐にわたるものです。これらの媒体を把握し、ターゲットに合わせた情報発信を行うことが大切です。極端に発信媒体が少ないと、採用メッセージが広く認知されず、応募に繋がらない可能性が高まります。そのため、積極的な情報発信が必要であり、例えば、活躍している社員の紹介や、社員が働く環境や待遇についての情報発信など、魅力的なコンテンツを多くの媒体で提供することで、求職者者に広く届けることができ、多くの興味を引くことができます。5-2. 採用活動を分解し、問題と課題を明確にする採用活動を分解し、各段階の数値を把握できたら、どこが問題になっているのか明確にしましょう。例えば、定期的に応募が来ているのに内定辞退が多い場合は、応募が来てからのプロセスに問題がないか確認が必要です。特に、面接でしっかり魅力づけができていない場合は、内定辞退になる可能性が高まります。その場合、面接設計から見直して、事業所説明で魅力が伝わっているか、見学の際に不安を払拭できているか確認しましょう。また、応募数が極端に少ない場合は、求人の内容、応募意欲醸成、発信数、発信媒体数を優先して見直しましょう。多くの場合、求人の内容がただの条件の羅列であったり、事業所の魅力が上手く伝わっていなかったり、そもそも発信が足りないことが多いです。応募意欲が醸成できていないと分かれば、事業所の魅力を伝えるために、SNSで事業所の業務風景を発信したり、各従業員の方の紹介をするなど施策が考えられます。発信が足りなければ、発信頻度を増やしたり、発信する媒体を増やすと良いでしょう。ホームページに情報を掲載するだけでは、認知は中々広がりません。そのため、認知を広げ、応募に繋げるためには、発信数と発信媒体数が重要となります。このように、採用活動のどこに問題があり、解決するために取り組むべき課題は何か検討しましょう。まとめ & チェックリストこの章では、現状の採用活動における問題の分析について解説いたしました。改めて、採用活動の問題分析について、以下のことが実施できたかチェックしてみましょう。・現状の採用活動を分解しましたか?・現状の採用活動のどの部分に問題点があるかどうか明確にできましたか?・明確にした問題点を分解、分析しましたか?・現状の採用活動の問題点を分解、分析しましたか?6. 転職市場・競合調査転職市場や競合を知らないまま採用活動を行うと、自社の魅力を明確にして発信することが難しくなります。そのため、転職市場や競合他社を調査し、自社の強みや魅力を明確にすることが重要です。転職市場の調査では、求職者の年齢層や保有資格、住んでいる地域などを把握する必要があります。また、競合他社の調査では、同じ業界の他社や同じ地域に居る異業種の採用ターゲットが被る会社が、どのような採用活動を行っているかを分析し、自社の戦略に活かすことができます。これらの調査を行うことで、適切な採用ターゲットの設計ができるだけでなく、自社の魅力を明確にし、効果的な採用戦略を立てることができます。6-1. 求職者数の調査と分析事業所を起点に、ターゲットとなり得る範囲内にいる求職者の数を調査しましょう。職種やエリアによっては、極端に数が少ない場合があるため、その場合には、ターゲットを広めに取る必要がでてきます。例えば、経験者だけでなく、新卒やブランク明けの方も対象にすることで、応募数が少なく面接ができないといった状況を回避できます。求職者調査は、採用ターゲットを選定するときに活用できるため、ターゲットとなりうる地域より少し離れたところも念のため調査しておきましょう。調査範囲が狭すぎると、ターゲット設計の際に適切な設計が難しくなります。6-2. 求職者属性の調査と分析一定距離内における求職者数が判明したら、次にそのターゲットが持つ属性を調査しましょう。属性とは、例えば年齢や保有資格、転職活動中か、どんな働き方の希望をもっているかなどです。調査方法はインターネットやSNS、また人材紹介会社の担当に聞くと良いでしょう。この属性をもとに、周辺にはどのような属性を持った人がどれくらいいるのかが分かります。その中で、採用ターゲットとなる人材がどのくらいいるのかを、採用ターゲット設計のタイミングで算出します。もし、採用ターゲットとなりそうな求職者の数があまりにも少ない場合には、ターゲットとなる経験年数や資格、年代を広げ、ある程度の数を担保できるようにしましょう。6-3. 競合となる求人の調査と分析医療・介護ネットワークを支える良き仲間である同業他社なども、採用活動上はどうしても競合となります。同業他社はもちろん、採用ターゲットが同じ異業種の企業の求人を分析することも重要です。競合となる事業所と給与や福利厚生、アクセス、教育体制などを比較して、自社が看護師に対して強みとしてアピールできるものがあるか、弱みとなるものがないか調査・分析しましょう。強みとなるものが分かれば、ターゲットの悩みや興味に沿って訴求内容を設計することができます。逆に弱みが分かれば、今後の改善点として取り組むか、採用活動では強くアピールしない方針を固めることができます。6-4. 競合が展開している施策の調査競合が展開している施策も調査しましょう。周辺には採用活動上、競合となる事業所や企業があると思います。看護師であれば、病院や施設、クリニックなど、介護士であれば介護施設だけでなく、一般企業も競合になってくるかもしれません。競合が実施している施策が成功しているのであれば、その施策は地域的にも合っているということになります。そのため、しっかりと競合を調査し、活動を学ぶことで、こちら側の採用活動をさらに良いものにすることができます。ここではオフラインとオンラインに分けて解説します。6-4-1. オフライン採用活動において競合となる事業所が、オフラインで求職者に対してどのような施策を打っているか調査しましょう。例えば、病院であれば積極的に学校説明会や合同説明会を行っている可能性があり、施設や訪問看護などであれば地域での活動やセミナーを行っている可能性があるので、競合がどのような施策をオフラインで実行しているか調査することが重要です。オフライン施策は、見学会や事業所説明会、合同説明会がよく活用され、直接的なコミュニケーションを図れるため、オンラインよりもダイレクトに応募意欲を醸成することができます。競合がオフライン中心で成功していれば、施策として検討するのも良いでしょう。6-4-2. オンライン採用活動上で競合となる事業所が、オンラインで求職者に対してどのような施策を打っているか調査しましょう。例えば、SNSでの発信や活用してる求人サイトなど、オンライン上での施策を調査し、真似できるところは積極的に取り入れることが大切です。オンライン施策は、主にSNSやオンラインセミナー、オウンドメディアがよく活用されています。これらは広く情報発信をすることができ、効率的に認知拡大が可能なので、競合事業所が行っているか調査しましょう。まとめ & チェックリストこの章では、転職市場・競合調査について解説いたしました。改めて、市場と競合の調査・分析について、以下のことが実施できたかチェックしてみましょう。・ターゲットとなりうる地域の求職者(採用したい職種での転職活動中の人。例:看護師や介護士)の数は調査しましたか?・ターゲットとなりうる地域の求職者の属性は、把握しましたか?・競合となりうる求人の調査・分析を行いましたか?・競合となりうる事業所の採用活動における施策を調査・分析しましたか?7. 採用ターゲット・訴求ポイントの設定採用ターゲットや訴求ポイントを決めることは非常に重要で、採用活動の根幹に関わります。採用ターゲットとなる看護師や介護士が決まらなければ、どのような求人内容にするか、どのような強みを押し出せば良いのかわかりません。また、訴求ポイントの設定を行わないと、事業所の魅力を採用ターゲットに上手く伝えることができず、応募が集まらない状況になってしまいます。そのため、これまでの現状把握、市場調査、競合調査で得た情報をもとに、採用ターゲットを決め、事業所の強みを精査し、訴求ポイントを設定することで、事業所の魅力をより伝えることができます。そうすることで、採用したい層から応募してもらえる、そして採用ができるという良い流れが出来上がります。7-1. 採用ターゲットの明確化採用したい人はどんな人なのか言語化しましょう。例えば、年代や保有資格、経験年数などターゲットとなる要件を明確にします。この際、限定的になりすぎず幅を持たせると良いでしょう。あまりに限定しすぎると、特に地方ではターゲットとなる求職者数がとても少なく、応募数が確保できないという事態が発生します。例えば20代~50代で正看護師、病棟経験3年以上で注射点滴採血といった手技が問題なく、採用しても戦力として活躍してくれそうな人をターゲットと置きます。この時、周辺に該当する看護師が少なければ、要件を広げる必要がでてきます。もし、現状教育体制の強みがあり、人員的にも余裕があれば経験1年からOKにしてみたり、ベテランの方でも活躍されているなら60代でもOKにしてみたりなど、事業所の強みや状況に応じてターゲットを決めましょう。同時にターゲットに入らない人も決めておくと良いでしょう。例としては、男性は更衣室等がないため不可や、持病をもっていてまだ症状が安定していない人は不可などです。そうすることで、例えば、ゆくゆく人材紹介やスカウトを利用する際に、紹介会社からの提案を絞る際や、スカウトの条件を絞る際に活用できるのでおすすめです。7-2. ターゲットのペルソナ設定ペルソナというのは、いわゆる人やモノが持つ"あるある"です。例えば、スポーツジムに通う人は、健康志向で、自宅にプロテインがあり、お酒は体型維持のために嗜む程度、というあるあるが仮定できます。採用においても、採用ターゲットのペルソナを仮想でも良いので設定します。採用ターゲット設定の際は、年代や保有資格などで言語化しましたが、ペルソナはもっと深い価値観や生活背景まで仮定します。20代の看護師がターゲットとなる場合、以下のようにペルソナを設定することができます。20代正看護師で総合病院5年勤務 現職ではリーダーを務めているものの、自分も現場でさらに専門性を深めるために転職活動中、ゆくゆくは結婚したいと考えているが、まずは看護師としてスキルを伸ばすことが優先。寮に一人暮らしで実家は地方、休日は都内に出て友人と遊ぶことや旅行に行っている、といったペルソナが設定できます。ペルソナを設定することで、相手にどのようにメッセージを伝えれば魅力に感じてもらえるか、考えることができます。前述の例を参考にすると、配属が選べて専門的な知識を持った先輩看護師がいれば魅力に感じると思いますし、寮があれば寮が完備されていることも推せます。また、休日数が多ければ、プライベートと仕事どちらも大切にできる、といった採用メッセージを積極的に発信できます。ペルソナ設定の際は、現在の従業員の方を参考にしても良いと思います。しっかりとペルソナを設定し、採用メッセージや訴求ポイントの設計に活用しましょう。7-3. 事業所の強み・弱みの洗い出し市場・競合調査の結果をもとに、様々な観点で強み・弱みを洗い出し、整理しましょう。例としては以下が挙げられます。・給与体系・福利厚生・勤務時間・残業時間の少なさ・離職率の低さ・業務内容・教育体制・アクセス・子育て理解・休日数・事業所の雰囲気・事業内容・キャリアステップ幅広く比較することで、強み、弱みを把握し、訴求内容の設計に活かしましょう。もし、競合となる事業所より給与が高く、休みが多い場合は、プライベートも重視しつつ、活躍した分だけしっかりと稼げることをアピールする、という訴求内容につながります。逆に、これまで残業時間が少ないことを強みとして感じていたものの、競合との比較で、そこまで強みにならないことが分かれば、他の強みを探してみるなどの動きが取れます。事業所の強み、弱みを正確に洗い出すことで、訴求内容・採用メッセージの設計に繋がり、ターゲットから応募が来るという結果につながります。7-4. 訴求ポイントの設定訴求内容は、競合と比較して強みとなるポイントや自社が積極的に発信したい強みを、採用ターゲットとなる看護師や介護士が魅力的に感じるように表現したものです。30代子育て中の方と、50代のベテランは違う価値観、生活背景、悩みを持っている為、同じ訴求内容では刺さりません。採用ターゲットのペルソナに合わせて、どの内容がより応募に繋がるのか、どのような表現がより魅力的に感じてくれるのか検討し、アピールする強みを選定しましょう。例えば、30代子育て中で経験5年以上の看護師がターゲットだったとします。30代子育て中の方はどんなことに悩んでいて、どんな価値観を持つかはペルソナの設定で検討済です。ペルソナ設定で出てきた悩みや、価値観に合わせて訴求内容を設計します。30代子育て中の方は家庭重視で働けないことに多く悩むため、ワークライフバランスの重視や子育て理解、時短勤務、土日休みといったキーワードに興味を持ちます。そのため、上記ターゲットの悩みを解決できる、また価値観に沿った強みがあれば、それが訴求ポイントとなるのです。逆にキャリアアップなどは、子育て中の方にあまり刺さらない傾向があります。そうした事業所の強みとターゲットのペルソナを照らし合わせて、打ち出す訴求ポイントを設定すれば、ターゲットに刺さり、応募に繋がるのです。7-5. 採用メッセージの設計採用メッセージとは、自社の魅力的なポイントを明確にし、ターゲットが求めるものにフォーカスしたメッセージのことです。これまでの流れでターゲットとなる看護師を明確にし、ターゲットの属性を理解し、訴求ポイントを明確にしてきました。最後に伝え方を選択することが大切です。ターゲットがどのようなメディアを利用するか、どのようなコンテンツに興味を持っているか、事業所としてどんなメッセージを発信し、共感してほしいのか考え採用メッセージを設計しましょう。例を挙げると以下のようになります。良い例:【専門性の高い看護師に成長し地域に貢献する】冒頭に看護師の成長を掲げ、地域に貢献したいという共感を集めることで、地域で看護師として頑張りたい人に訴求する微妙な例:【地域No1の実績で最新ITツールを活用して働けます】視点があくまでも自社視点なので、刺さりづらく自慢のようになってしまっている。ペルソナの設定も、訴求内容の設計も、採用メッセージの設計も、全て採用ターゲットとなる読み手が、惹かれるか否かで判断して作成を行います。1番難しいポイントですが、1回で完璧なものを作成するのではなく、分析と改善を進める中で最終的に完成すれば良いと思います。7-6. 採用ハードルの設定採用ハードルは事前にある程度決めておくと、役割分担の後、誰かに採否の決定を任せる際にもスムーズです。自己応募で来た看護師、紹介経由で来た介護士、求人広告で来たPTなど応募経路によって採用ハードルを設定しましょう。また、設定するハードルに関しても、面接を実施するハードルと内定を出すハードルの2種類検討しておくと良いでしょう。ハードルに関しては経験年数や勤務可能日数など多岐に渡るため、事業所の状況に応じて設定しましょう。よく見かける応募ハードルが、臨床経験3年以上ですが、最近では1年ほどで退職してしまう看護師や介護士も多いため、状況によってはハードルを下げると応募が広がる可能性もあります。まとめ & チェックリストこの章では、採用ターゲット・訴求ポイントの設定について解説いたしました。改めて、採用ターゲットや事業所の強み、弱みの洗い出し、訴求ポイントの設定について、以下のことが実施できたかチェックしてみましょう。・市場調査をもとに、採用ターゲットを明確にしましたか?・採用ターゲットのペルソナを設定しましたか?・事業所の強み/弱みを競合と比較して洗い出すことができましたか?・訴求ポイントを設定できましたか?・訴求ポイントをもとに、採用メッセージの設計をしましたか?・採用ハードルの設定をしましたか?8. 施策選定採用活動における施策は1つや2つではなく多数存在するため、採用目標数や目標予算、スケジュールによって、施策を選定し、優先順位を決めて実行しましょう。施策の実行には時間も労力もお金もかかります。そのため時間のかかる施策は早めから初めて置き、即効性の高いものは後に回すというのも一つの選択肢です。しかし、かなりひっ迫した状況であれば、無料媒体だけでなく、人材紹介やスカウトなどの有料媒体も併用することも検討してみると良いでしょう。※参考記事:看護師採用で応募を増やすために使える施策アイデア61個これまでの支援をもとに、採用活動で使える61個の施策を一つの記事にまとめております。施策選びに迷った際には参考にしてみてください。8-1. 施策の選定の仕方施策選定は、採用目標や予算、スケジュールをもとにするだけでなく、市場・競合調査で得た情報も活用し、慎重に選びましょう。誰かが良いと言っていたからという曖昧な理由で、誤った施策を選定・実施すると、お金や時間を無駄にしてしまう可能性があります。施策を選ぶ上で意識していただきたいのが、各施策は人材の質、費用、時間のうち最大2つの項目しか期待ができない、というものです。例えば、人材紹介であれば短時間で優秀な人を採用できる可能性がありますが、費用には目をつぶる必要があります。逆にSNSであれば、費用がかからず優秀な人を採用できる可能性がありますが、採用できるまでに時間がかかります。そのため、施策を選定するには、事業所の採用活動の状況を鑑み、軸を設定する必要があります。今の採用状況では、時間が大切なのか、費用が大切なのか選定する軸を決め、そのうえで、採用ターゲットに合った施策を選びましょう。8-1-1. 人材の質採用できる人材の質はとても重要です。即戦力となる人材を採用できれば、現場の体制強化に繋がり1人1人の負担が軽減されるだけでなく、患者や利用者に対してのサービスの質も向上します。逆に受け入れ体制が整っていない状況で、経験年数の浅い人を採用した場合、現場に負担がかかってしまいます。そのため、選択する施策で人材の質を担保できるのか、施策を決定する前に検討することをおすすめいたします。8-1-2. 費用採用施策を選定する上で費用に注意が必要です。採用にかかる費用は、求人広告の掲載費用や人材紹介会社の手数料など、多岐にわたります。そのため、採用予算を把握し、費用対効果の高い採用活動を行うことが求められます。ただし、費用を抑制しすぎると、応募が極端に減ってしまうなど、採用活動が十分に行えなくなる場合があります。採用費用と効果のバランスを取りながら、効果的な採用活動を行うことが重要です。8-1-3. 時間採用において、採用までにかかる時間も重要です。前述の通り、すぐに採用ができる施策は費用がかかってしまう場合があります。しかし、事業所によっては配置基準があったり、現場が限界を迎えているケースがあります。その場合は、早急に採用ができる施策を選ぶ必要があります。採用スケジュールに余裕がある場合は、時間のかかる中長期的な施策を実行しつつ、スケジュールに余裕がなくなってきたタイミングで、即効性のある施策を取り入れると良いでしょう。8-1-4. 必要性施策を選ぶ上で、その施策の必要性も検討しましょう。時間もお金もかかるが確実に行った方が良い施策も存在します。例としては、採用活動の中心となる採用ページの作成があげられます。採用ページ作成は費用もかかりますし、時間もかかりますが、採用に繋がるかどうかは不明瞭な部分があります。しかし、他の施策と組み合わせることで採用促進効果を引き上げることもできます。採用ページも適当なものだと逆効果になってしまうため、もし予算に余裕があれば、業者にしっかりとした採用ページを作成してもらうことをおすすめいたします。8-2. 施策実施スケジュール採用施策はとても多く存在するため、選定が重要と解説いたしました。選定した施策に優先順位をつけ、いつまでに実行するか決めることも重要です。実行する施策の優先順位をつけ、スケジュールに落とし込むことで、実行がスムーズになるだけでなく、採用状況に応じて柔軟に組み替えることもできるので、戦略を立てる段階で決めておくことをおすすめいたします。スケジュールを決める際には、時期以外にも状態目標を作ってスケジューリングする方法もあります。状態目標とは、「○○の状態になっていたいという」目標です。例えば、SNS運用を例にすると、「500フォロワーにいったら違う施策に注力する、それまではSNS運用に注力する」といった形で、状態目標をスケジューリングに活用することができます。選定した施策に優先順位を決めて実行しましょう。まとめ & チェックリストこの章では、施策選定について解説いたしました。改めて、施策の選定や、施策の実施スケジュールについて、以下のことが実施できたかチェックしてみましょう。・施策を選定する軸は決めましたか?・選定軸を決める際に、採用の課題、採用ターゲット、採用状況など多角的に考慮しましたか?・選んだ施策に優先順位を決めましたか?・施策を実行する時期は決めましたか?9. 選考プロセスの構築次に、選考プロセスについて解説します。選考プロセスは、施策を選定し、それらの施策で集めた求職者をどのような過程を経て選考していくかというものです。また、応募をしてくれた入職者の意欲を維持しつつ、自社と応募者がお互いにマッチするかを確かめる大切な部分でもあります。画像は、よくある選考プロセスを図にしたものです。医療・介護業界では、基本的に上の図のような選考プロセスで、応募者を選考します。しかし、適切な選考プロセスは、事業規模や採用状況によって異なります。書類のスクリーニングを行う事業所もあれば、二次面接を行う事業所もあります。そのため、事業所ごとに適切な選考プロセスを構築することで、応募者の選考プロセスにおける途中離脱を防ぐだけでなく、工数の削減にもつながります。各プロセスごとにやることを決めて、担当者を割り振り、応募者が途中で辞退する確率を落としましょう。そうすることで応募から採用に至る割合を最大化し、採用成功が近づきます。ここでは、各プロセスに分けて解説していきます。9-1. 応募応募は、採用活動の始まりです。認知拡大や応募意欲醸成の施策の成果が一番影響します。応募が来たから採用が決まるわけではないので、応募が来た時にはできるだけ早く応募者に返信をしましょう。可能であれば1日以内に連絡を取り、気持ちが変わってしまわないように進めましょう。1週間以上経ってしまうと、応募者は「応募が難しいのか」と判断し、他の事業所に行ってしまいます。特に、すぐに働きたいと考えている離職中の看護師や介護士は、2日連絡が来ないだけで次の応募を進める方がいます。そういった方を取りこぼさないよう、応募連絡をチェックできるような仕組みづくりを行い、返信担当も決めておくとスムーズでしょう。9-2. 書類スクリーニング応募書類のスクリーニングです。スクリーニングを設けない事業所もあるかと思いますが、あまりに適当な応募書類を提出してくる人もいるので、面接をする前に確認することで、無駄な面接をする工数を削減できます。もちろん、応募者全員と会ってみて判断するというのも良いと思います。実際履歴書が少し雑でも、面接で会ってみたらとても良かったということもあります。採用に困っていない状況で、少数の優秀な人を採用したいという時には、スクリーニングを設けると、無駄に面接を実施することは無いので、採用状況や目的から考え実行することを検討してみてください。9-3. 面接調整面接日程の調整は早めに連絡を送りましょう。また調整の際には可能な限り時間帯を広めに複数日程を提案しましょう。例えば、6月20日:9時~16時 6月23日:10時~19時など複数の日程、時間帯を提示すると良いでしょう。もし面接日程の工数を削減したければ、採用ページに面接可能な曜日、時間帯を記載し、応募の際に一緒に候補日を送ってもらうとスムーズです。また面接当日に必要な書類等も忘れずに伝えましょう。最後に一工夫として、「当日面接でお会いできるのを楽しみにしております」と付け加えて連絡すれば、面接実施率の改善を図れます。まだ会ったことの無い浅い関係なので、面接辞退は起こりえます。そのため会えることを楽しみにしていると伝えることは、辞退率を下げる意味でも重要です。9-4. 面接実施応募してくれた看護師や介護士と初めての対面コミュニケーションです。事前に用意した質問事項を確認し、双方良い相手か確かめます。注意が必要なのは、看護師や介護士などの応募者も事業所を評価しているというポイントです。そのため、言葉遣い、印象管理などには注意が必要です。すれ違う職員が挨拶をしてくれるか、事業所は散らかっていないか、そういったポイントも応募者は確認します。適切な対応が事業所全体でできるように心がけましょう。また、面接は1次面接だけで終わるのか、2次面接もあるのか、当日は見学も行うのかなど細かく想定しておきましょう。多くの事業所では、面接と見学を同日に行い、一日で選考が完了するケースが多いです。面接については後述の「面接設計」で解説しておりますので、詳細はそちらをご覧ください。※参考記事:看護師採用における選考プロセス設計の基本9-5. 採否検討面接実施後、採用か不採用かの判断を行います。採用において大切なフェーズです。採用か不採用か決めるために、誰が判断するのか決めておきましょう。現場の従業員確認も入るのか、管理者だけで決定するのかなど採否決定のフローは明確にしておいて損はないです。また、採用決定のフローだけでなく、採否については理由も含めて明確にしておきましょう。例えば、経験面でイメージと違った方の応募が多い場合は、採用メッセージを変える必要がでてきます。採否の理由を明確にすることで、採用活動全体の改善を図る材料になります。採否の結果については、訪問看護ステーションやデイサービスなどは現場職員との話合いが行われることが多く、病院や介護老人保健施設では事務長、看護部長、介護長など上席で判断されることが多いです。いずれにしても役割を事前に決めておくこと、採用理由を明確にしておくことが大切です。9-6. 採用通知採否が決まったら早めに応募者に連絡をしましょう。連絡までに時間がかかってしまうと、不安が募り、他候補に行ってしまうなど、辞退可能性が高まります。また、採用通知の際は応募者の入職意欲を高めるため、面接で会った時の印象や、事業所にフィットしそうなポイントを採用と一緒に伝えましょう。そうすることで、入職意欲を高め期待をもって入職し、入職後も活躍してくれる人材になってくれます。逆に採用通知が遅く、かつ採用と条件だけ伝えられては、本当に必要とされているか不安になってしまいます。事業所として歓迎していて、一緒に働く仲間として期待していることを伝えましょう。9-7. 入職前フォロー採用が決まり、応募者の内定受諾も確認したら入職前フォローです。細かい連絡やウェルカムレターなどの施策で入職前の辞退を防ぐことができます。細かい連絡を取ることで相手の変化や不安に気づくことができ、もし不安を抱えていたら不安解消の動きが取れます。心理学的にも接触回数が多いと興味を持つといわれているので細かく連絡を取りましょう。またウェルカムレターを送るのもおすすめです。ウェルカムレターは簡単にいうと、相手の入職を心待ちにしていると伝えることです。従業員はもちろん、選考で関わった人から直接言葉をもらい、入職予定者に伝えましょう。9-8. 役割分担役割分担を明確にしておくと、採用フローがスムーズに進みます。逆に明確になってないと無駄に時間がかかってしまったり、応募者への連絡が遅れて離脱につながったりなど、採用が上手く進まないケースもあるので注意が必要です。役割分担が完了した後、事業所全体に周知しておくと、誰かが休んでしまった場合でも事業所全体でカバーができます。役割ごとに工数が違うので、忙しい人に重い役割ばかりを任せないようにすることを意識しましょう。小規模事業所では、全てを1人で担当するケースが多く、中・大規模事業所では役割ごとに分けているケースをよく見ます。採用にかけられる人員を鑑み、適切に役割分担を行いましょう。9-8-1. 媒体管理者ハローワークやindeedへの求人出稿、求人広告の管理など各媒体の管理を行います。主に、応募を集めるということが目的になるため、日々管理が可能な人が適任でしょう。indeedなどの媒体では、求人閲覧数を数値化して分析できます。どの求人が一番見られたか、応募に繋がったかを確認し、求人のアップデートを行い応募数を増やしていくことが大切になります。また一部事業所では採用のためのSNSを活用しており、その運用を媒体管理者が行うことがあります。9-8-2. 採用窓口応募を受けたときに対応する役割です。応募者に面接当日の案内や適性検査の連絡など細かく連絡を取ったり、紹介会社からの提案を受け判断するなどタスクが幅広くなりがちです。そのため、タスク管理が得意な方が良いでしょう。特に、採用窓口は外部からの連絡が多い中で、抜け漏れなく対応する必要があります。応募者の返信に遅れてしまったり、外部からの連絡に返答し忘れてしまうと、せっかくの採用機会を逃してしまう可能性があります。9-8-3. 面接官面接を担当する役割です。面接の際は事業所とのフィットを確かめるだけでなく、応募者から逆質問をもらうケースもあります。逆質問を受けた際に適切に回答できるよう事業所理解が深い人が適任です。面接後には、面接の評価を責任者にフィードバックします。その内容が採用か不採用を決めることになるため、とても重要な役割です。また、面接官はその事業所の印象を決める人にもなりうるので、悪い印象を与えてしまうと、採用以外の場面でも影響がでる可能性があります。そのため、面接官として適切なふるまいができるのかも面接官選びでは大切になります。9-8-4. 採用統括者採用全体を統括する役割です。採用スケジュールに沿って施策の実行や指示を出します。採用数に責任をもち、採用目標の達成を一番に考え行動する必要があります。また、応募者の選考や採用後の人事管理など、採用に関する業務全般を担当することがあります。採用の進捗管理や役割分担、各プロセスでのフォローなど対応する業務は幅広くなります。また、院長や経営者に進捗報告をする必要も出てくるため、責任ある仕事を任せることができる人材が良いでしょう。9-8-5. 最終決定者採否を決定する、つまり決裁権を持つ役割を担います。スカウトや紹介会社経由で入った場合には、手数料を支払っても良いと判断を下す人となります。採用統括者と兼任する場合も多い役割で、担当する部署や職種によっては、より専門的な知識や技能が求められることもあります。規模の小さい事業所の場合、すべての役割を一人が担当することもあり、規模の大きな事業所の場合だと全ての業務ごとに分かれているケースもあります。採用業務は多岐に渡るため、総合病院のように大量採用を行う事業所では、最終決定者は看護部長や事務長となることが多く、ある程度の裁量を事前に渡されているケースがよく見られます。まとめ & チェックリストこの章では、選考プロセスの構築について解説いたしました。改めて、選考プロセス設計や役割分担について、以下のことが実施できたかチェックしてみましょう。・事業所にとって適切な選考プロセスを構築しましたか?・採用活動・選考プロセス全体での役割分担は、明確にしましたか?・構築した選考プロセスは、工数や選考期間に実現可能性はありますか?・採用関係者が複数人いる場合)構築した選考プロセスや各詳細について確認しやすい資料などを準備しましたか?10. 面接設計次に、選考プロセスの途中で必ず通る、面接の行い方に関する部分である面接設計について解説します。面接は、応募者との最初の対面コミュニケーションの場であり、選考プロセスの中でも特に重要な役割を担います。面接は、応募者の選考以外にも、事業所の魅力を伝えるタイミングでもあります。選考プロセスが応募、面接、採用、入職という流れで進む場合、応募者は面接での印象で、入職するか否かを決定します。つまり、面接での印象が良ければ内定受諾率は上がりますが、面接での印象が悪ければ入職に至りません。そのため、面接当日に実施することを事前に設計することで、ミスマッチを防げるだけでなく、採用を出した際の内定受諾率を高めることもできます。ミスマッチを防止し、内定受諾率を高めるための面接を目指すのであれば、面接を行う前よりも、面接を行った後の方が、事業所に対して好印象である状態をつくる必要があります。この章では面接設計について、各段階に分けて解説していきます。10-1. 自己紹介まず、自己紹介についてです。応募者には、事業所名、役職、名前を伝えましょう。最初のコミュニケーションはとても重要です。人の第一印象は約3秒で決まると言われており、これは心理学で初頭効果と呼ばれます。第一印象はとても記憶に残りやすく、最初のコミュニケーションで嫌な印象を与えると、面接中、面接後も良い印象を感じにくくなります。服装、姿勢、声のトーンなど、最低限気を配ると良いでしょう。また、忘れてはいけないのが、応募者も忙しい合間を調整して面接に来ていること、つまり、お互いにとって良い時間にする必要があるということです。特に、転職活動をしている人であれば、休みを調整して面接に来ています。面接に来た時に、明らかに歓迎されていない雰囲気や横柄な態度を取られたら、入職したいと思うでしょうか?恐らく、採用となっても受諾はしないでしょう。相手が時間を使ってくれているという事実は忘れずに、面接を実施しましょう。10-2. アイスブレイク質問に入る前に、アイスブレイクを挟むと良いでしょう。聞きなれない方は、「アイスブレイクとは?」と思うかもしれません。アイスブレイクとは、初対面の人との会議や商談の場など、緊張感のある場を和ませるためのコミュニケーションのことです。相手の緊張を和らげることで本音が出やすくなり、話しやすい雰囲気を作ることで、採用側の印象も良くなります。実際に面接後に、看護師の方や介護士の方から、「話しやすい雰囲気を作ってくれてとても助かったし、印象が良くなった」とフィードバックをもらうこともありました。自己紹介の後に、すぐ質問に入るのではなく、アイスブレイクを設け、話やすい雰囲気を作ると良いでしょう。具体的には、以下のような話題がおすすめです。天気や季節の話 最近暑くなってきましたが、面接に来るのは大変ではありませんでしたか?当日の交通状況 今日はお車で来られましたか?渋滞などは大丈夫でしたか?ポイントとしては、面接とは関係のない雑談であること、またYes or Noで応えられるクローズドクエスチョンであることです。最初から簡単に答えられないオープンクエスチョンだと、回答に迷ってしまうので、答えやすいクローズドクエスチョンで会話を始めるのが良いでしょう。10-3. 質問質問は応募者とのマッチ度を確かめるためにとても重要です。適当な質問では、ミスマッチを生んでしまう危険性があります。そのため、質問は意図をもって行いましょう。質問設計をするうえで大切なポイントは、質問によって確かめたいポイントを言語化すること、確かめたいポイントを落とし込んだ質問を設計することです。例えば、採用ターゲットを、責任感があり、問題が起こった際に自責で捉え、周囲と協力して仕事を進めることができる看護師とします。また、経験面は手技やアセスメントが1人で問題なく行える方がターゲットとします。その場合、確かめたいポイントは、責任感があるか自責で捉えるか協調性があるか経験が問題ないかというポイントになります。そして各ポイントを確かめる質問をすることが大切です。責任感を確かめたい場合は以下のような質問が考えられます。これまで問題が起こった際に、どのように対応してきましたか? →最後までやりぬいたか、途中諦めたか、責任転嫁していないか後輩指導と目の前の看護、どのようにバランスをとっていましたか? →任された仕事と忙しい現状をどのように調整していたか協調性を確かめたい場合は以下のような質問が考えられます。周囲からどういう人だと言われますか? →周りとコミュニケーションで問題がないか同僚や上司と関わる際に、気を付けていること、大切にしていることは何ですか? →周りとの関係構築をどのように行うかこのように、マッチ度を高めるために質問で確かめるポイントを言語化し、質問に落とし込むことが大切です。つまり、応募者が困るような難問や奇問、意図の分からない質問は必要ないのです。10-4. 事業所説明事業所説明では、応募者に対して事業所の魅力をたくさん伝えることができます。質問の後は、基本的に事業所がどのような運営をしていて、どのような人が働いているのか説明をすると思います。ただ単に、事業所の説明をするだけでは、せっかくの魅力づけの機会がもったいないです。面接の中で聞いた応募者の悩みや今後のキャリアについて、自社に入職して働くことで得られる価値を伝えましょう。恐らく、面接では「どうして転職を考えているのか?」といった質問をされると思います。そこでは、応募者が現職を続けられない理由や、現職で抱えている悩みが聞けると思います。その悩みに対して、自社に入職することで解決できる、という強みを伝えましょう。例えば、子育て中の看護師が応募者で、現職での残業時間に悩んでいる場合、事業所説明の際には、どのような働き方が可能か、子育て中の方が実際に活躍しているエピソードを伝えましょう。つまり、応募者の悩みに寄り添い、「自社に入職することで悩みを解決できる」というイメージを持ってもらうことで、応募者の入職意向をあげることができます。「もし、応募者の悩みを解決できるような強みがない場合はどうしたら良いの?」と思われるかもしれません。しかし、採用ターゲットに合わせた訴求ポイントを発信し、そこに興味を持って応募して面接にきたのであれば、事業所の強みが採用ターゲットとなる看護師や介護士にとって、魅力的に映っているはずです。そのため、応募者の悩みと事業所の強みが一致しない場合は、採用メッセージが誤って伝わっている可能性があるため、見直しが必要となります。正しい採用メッセージで、来てほしい採用ターゲットが面接にきていれば、採用ターゲットの悩みは事業所の強みで解決できることでしょう。また、事業所説明の際には、応募者に対して、「○○というポイントで、うちに合うと思うよ」と伝えましょう。そうすることで、応募者も安心感を抱き、内定受諾率が上がります。逆の視点に立ってみて、面接を受けた際に、事業所側から、「うちに合ってると思う」と言われたら、悪い気分になる人は少ないと思います。事業所説明を事前に設計し、悩みに合わせて魅力を伝えることで、採用ターゲットの入職への意向を高めましょう。10-5. 逆質問逆質問は、応募者から事業所に対して質問をする時間です。ここでは、質問や事業所説明を通じて、応募者が不安に感じているポイントや分からないポイントに対して質問が来ます。逆質問の役割は、応募者の不安解消になります。求人情報や事業所説明では分からない部分を応募者は質問します。そのため、どういう質問が来そうか事前に想定しておくと良いでしょう。上手く回答ができれば、不安解消だけでなく、さらなる魅力づけを行うことができます。例えば、採用ターゲットがキャリアアップしていきたい20代の方であれば、キャリアステップや給与についておそらく質問があると思います。また、ブランク明けの方がターゲットの場合、サポート体制や、実際にブランク明けの方が事業所にいるか質問が来ると思います。こういった逆質問に対して、応募者が質問した意図と求めている回答を適切に伝える必要があります。咄嗟に答えられない可能性もあるため、面接官に慣れていない方が対応する場合は、事前にQ&Aという形で考えておくと安心でしょう。10-6. 見学面接当日の最後のフェーズは見学です。見学では”事業所の中身”を見せることで、事業所で働くイメージを持ってもらいます。この時に意識するべきポイントは、面接官以外の人と話す機会を作ること、見学時にイメージダウンにならないように、事前に見学時に関わりそうな人に見学の実施を伝えておく、ということです。面接官以外の人と話す機会を作ると、応募者は安心して入職を選ぶことができます。採用ページや事業所説明からイメージした事業所と、実際の事業所の様子が一致しているのか、応募者は確かめます。実際、見学を行うまでは、応募者は不安が大きいと思います。どんな人が働いていて、どんな雰囲気でなのか分からないからです。コロナ禍で見学が難しい時には、「見学ができるまで入職を待つ」という看護師や介護士もいたくらいでした。実際に見学を通じて自分の目で見てみると、「この事業所いいかも」から「この事業所良い」に変わります。つまり、期待から確信に変えることができるのです。例えば、事業所説明時に、事業所の魅力を「和気あいあいとしていて、現場の人も明るい人が多いので、人間関係は良好です」と伝えたとします。その後、見学の際に実際に現場で働く人や、入職したら上司にあたる人と話せたら、聞いていた話が本当か確かめることができます。逆に、見学の際に、事業所の中の様子が見れない場合や、面接官以外の人と話せなかった場合は、あくまでも事業所説明で聞いた話という"確信が持てない情報"で終わってしまいます。そのため、見学と、面接官以外とのコミュニケーションを通じて、事業所説明で聞いた事業所の魅力が本当かどうか確かめることができます。見学時にイメージダウンしてしまわないためにも、見学時に関わりそうな人には、見学が実施されることを周知しておきましょう。見学時に、挨拶が返ってこなかった、暗い雰囲気だったということで、入職を断る人も多数いらっしゃいます。見学時にそういったことが無いように、日々の挨拶もそうですが、特に気を付けるよう周知しておくのが良いでしょう。まとめ & チェックリストこの章では、面接設計について、見学や事業所説明含め解説いたしました。改めて、適切な面接設計について、以下のことが実施できたかチェックしてみましょう。・面接当日に実施することを整理しましたか?・①自己紹介→②アイスブレイク→③質問の流れでどのような話をするか決めましたか?・質問によって確かめたい内容は明確になっていますか?・確かめたいポイントを適切に確認できる質問になっていますか?・事業所説明でアピールする内容は明確にしましたか?・応募者からの逆質問に対する回答は考えてありますか?・見学の際に応募者を対応する人は決まっていますか?11. KGI・KPIの設定最後に、施策の実行と改善の参考となるKGIとKPIの設定について解説します。採用戦略において、KGIとKPIは重要な指標です。KGI(Key Goal Indicator:主要目標指標)は「採用活動の最終的な目標」を示すものです。KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)は「その目標にどれだけ近づいているかを測るための具体的な指標」を示すものです。KGIの例としては、「次の半年間で看護師を10名採用する」や「今年度中に介護士の採用数を昨年度比で20%増やす」などが考えられます。これが最終的に達成したい目標です。一方で、KPIはその目標に向かうための具体的な行動や結果を測るための指標です。KPIの例としては、「毎週3つ以上の看護学校に訪問する」、「一ヶ月に20人以上の看護師候補と面談する」、「新聞広告やウェブ広告を使って応募者数を一定数以上集める」などがあります。これらのKPIは、最終的なKGIに向けて適切な進行ができているかを定期的にチェックし、必要に応じて戦略や行動を調整するための手がかりとなります。例えば、もし「一ヶ月に20人以上の看護師候補と面談する」というKPIが達成できていなければ、もしかしたら採用活動の方法を見直す必要があるかもしれません。このように、KPIは目標達成のための戦略や行動を見直す際の重要な指標となります。以下でKGI・KPIとして設定するのにおすすめな項目の具体例を解説します。各項目はどれも最終的な採用目標に繋がる項目なので、KGI・KPIとして設定し、分析できるようにすることをおすすめします。11-1. 求人閲覧数求人が何回閲覧されたかを指します。この閲覧数は、主に認知拡大施策と関連します。求人が閲覧されないと、応募にもつながらないため、閲覧数は非常に重要な指標と言えます。また、閲覧数だけでなく、掲載期間中の変化も分析することで、どういった求人がより魅力的なのかを把握することができます。Googleアナリティクスや各求人媒体で分析できるよう、体制を整えましょう。求人の閲覧数を伸ばすには、各種媒体への掲載やSNS、人材紹介会社の利用など幅広く施策がありますので、採用状況や予算に応じて使い分けましょう。11-2. サイト訪問数この指標は、ホームページや採用ページへの訪問数を表します。求人閲覧数と同様にGoogleアナリティクスで分析することができます。ただし、転職活動中の看護師や介護士以外にも訪問者がいることが考えられるため、サイト訪問数だけを目標に設定するのではなく、求人閲覧数とともに分析することが重要です。また、サイト訪問数を増やすためには、SEOやローカルSEO・MEO対策の強化、SNSの活用などの施策があり、これらの施策を実施することで、サイト訪問数を増やし、求人閲覧数の増加につなげることができます。11-3. 応募数求人に応募してくれた数を指します。すでに何度も述べている通り、応募が来たからといってすべてが面接に至るわけではありません。応募者がイメージと違うと判断した場合や、求人内容に興味を示したが他社で内定をもらった場合など、面接に至らないケースもあります。このように、必要採用数に対して応募数が少ないと、採用目標到達が難しくなってしまいます。一般的には、必要採用数の2倍~3倍の応募数があると採用に十分な余裕ができます。応募数を増やすための認知拡大や応募意欲醸成の施策を幅広く行い、応募数の増加を図りましょう。11-4. 面接実施数応募が来て面接を実施した数を指します。応募数と同数になるのが理想的ですが、応募に対する連絡が遅く離脱してしまうなど面接が実施されないケースもあるので、面接実施数が応募数と大きく乖離する場合は改善が必要です。例えば、応募に対する問い合わせに関して、自動的に担当に通知が飛ぶように設定を組んだり、面接可能日程を広めに取り応募者となる看護師や介護士が調整しやすくするなどが対策として考えられます。11-5. 面接通過数面接を通過した数、つまり内定を出した数になります。この面接通過数が少ない場合は選考ハードルや採用メッセージの見直しが必要となります。あまりに選考ハードルが高いと面接を実施しても面接通過数が上がりません。また、ターゲットとずれた応募者が多い場合も通過数が落ちるため、採用メッセージや施策を見直す必要があるでしょう。ターゲットとずれた応募者が多いことが課題であれば、採用メッセージや施策を見直すことで、より適切な応募者を集めることができます。11-6. 採用目標数採用したい看護師や介護士の数を指します。前述のKGIとして設定するのに適した項目です。採用活動では、内定を出しても入職に至らないケースがあります。例えば、他の事業所にすでに決まってしまった場合や、何かしらの事情で入職ができなくなった場合です。このような場合、採用目標人数に対して実際に入職する人数が少なくなってしまい、採用計画が狂ってしまうことがあります。そのため、入職が決まらない原因について分析し、改善策を考える必要があります。例えば、面接の内容や採用フローの見直しを行い、より適切な採用プロセスを構築することが求められるかもしれません。まとめ & チェックリストこの章では、KGI・KPI設計について解説しました。改めて、KGI・KPI設定について、以下のことが実施できたかチェックしてみましょう。・採用活動におけるKGIは決めましたか?・KGIを達成するためのKPIは設定できましたか?・KGI・KPIを把握するための体制は整っていますか?・採用関係者へ周知/認識の共有をしましたか?12.まとめ今回は、医療・介護業界における、採用戦略について解説しました。採用は、やることが多岐に渡り、忙しい日々のなかでは後回しにされがちです。しかし、採用戦略を立て、事業所の求めるターゲットに対し、適切な施策で情報を届けられれば、採用が前に進むでしょう。採用戦略を立て後は、戦術面が重要になってきます。ここでいう戦術とは、施策をうまく実行し、KGIやKPIを達成することを指します。しかし、どれだけ上手く施策を回せても、そもそもの戦略が無ければ、施策が上手くいっているのに、採用が進まないということになります。そのため、採用戦略を持ったうえで、施策を実行することがとても大切です。最後まご覧いただきありがとうございました。本記事が、皆様の採用活動のお役に立てれば幸いです。本記事と合わせてご活用いただける採用戦略チェックリスト150と、KPI参考値計算シートを作成しました。以下のリンクをクリックしていただくと2つのファイルが入ったzipファイルのダウンロードが開始されます。※個人情報の入力は不要です。※エクセルファイルとなっているので、スプレッドシートご活用の方はスプレッドシートにインポートしてご利用ください。採用戦略チェックリスト150&KPI参考値計算シートをダウンロードする↓