医療・介護業界の採用市場は全体的に売り手市場のため、安定的な人材確保は簡単ではない現状です。しかし、配置基準が定められている事業所形態にとって人材不足は深刻な問題であり、解決するために多額の費用を投じている事業所が多く存在します。採用が厳しい中で、コスト削減は勇気のいる決断です。ですが、コストを削減し、安定的に採用ができる状態を目指さない限り、採用コストが膨れ上がる一方です。そこで今回は、医療・介護業界における採用コスト削減方法について解説いたします。【AIサマリー】この記事でわかること採用コスト削減の方法と重要な点がわかります。記事の要約医療・介護業界における採用市場は売り手市場であるため、医療・介護スタッフの採用コスト削減は事業所にとって重要な課題です。この記事では、医療・介護スタッフの採用コストを削減するための3つのポイントを紹介します。まず、有料媒体の活用を減らすこと、次に無料媒体や無料施策を活用すること、最後に医療・介護スタッフの離職率を減らすことです。ただし、事業所の採用における目的を見失わないようにすることが重要です。有料媒体の活用を減らす場合、媒体選定の軸を定めることが重要です。また、無料媒体や無料施策を活用する場合、採用ターゲットに合わせて媒体を選定する必要があります。さらに、医療・介護スタッフの離職率を減らす場合、入職後のフォローや面談を定期的に行うことが大切です。これらのポイントをうまく活用し、採用コストを削減しつつ、優秀なスタッフの採用につなげましょう。採用コストを削減する上で忘れてはいけないこと採用コストを削減する上で忘れてはいけないことは、採用の目的から外れないことです。例えば、事業所を大きく、安定させ、地域に安心安全な医療を提供するという目的で採用を行っているにも関わらず、コスト削減をしすぎて離職率が上がったり、患者や利用者の満足度が下がってしまうようなことが起きてしまうと、コスト削減成功とは言えません。採用コスト削減も採用の中の一つの活動なので、その視点を見失い、コスト削減だけを実行しても、結果的に事業所を弱らせてしまうことに繋がりかねないので、採用の根本的な目的を見失わないようにしましょう。採用コストを削減するには?採用コストを削減するためには、3つの重要なポイントがあります。1つ目は有料媒体の活用を減らすこと、2つ目は無料媒体を活用して採用を促進すること、3つ目は従業員の離職率を減らすことです。1つ目のポイントは当たり前ですが、有料媒体を多用すると、採用コストが跳ね上がります。人材紹介や求人広告、スカウトなどを多用すると、かなりの採用コストがかかります。2つ目のポイントは、有料媒体を減らし、無料媒体を利用して採用することです。そして3つ目のポイントは、必要な採用数自体を減らすことです。それぞれ詳しく説明します。【1】有料媒体の活用を減らす有料媒体とは、求人広告やスカウト、人材紹介などの費用がかかる媒体のことです。有料媒体を減らすと採用コストはぐっと下がります。採用において、採用コストがかかってしまっている原因は有料媒体に依存してしまうからです。有料媒体は工数をかけない代わりに迅速に採用ができるメリットがあります。しかし、その分費用もかかってしまうデメリットがあります。代表的な例として人材紹介があります。人材紹介は看護師が転職時に活用する媒体で1位を取るほど浸透しています。そのため事業所側が人材紹介を利用すれば、ある程度、質の担保された看護師を少ない工数で採用することができます。ですが、紹介料の支払いは常勤採用で平均80万円~90万円とかなり高額で、紹介会社に依存してしまうと採用コストが膨大なものとなります。このように、有料媒体に頼り切ってしまう状態だと採用コストを削減が難しいため、徐々に活用を減らすことで採用コストを減らします。しかし、一度にすべての媒体の利用を停止してしまうと、採用数が激減してしまうため、徐々に無料媒体の活用や離職を減らす取り組みを行い、必要採用数を下回らないように進めていきましょう。特に急性期病棟など配置基準が決まっており、基準を満たさないと加算が取れない場合は、慎重に活用を減らすことをおすすめいたします。採用コストを抑えても、結果的に収支が悪くなってしまうと意味がありません。有料媒体の活用を減らすポイントもいくつかあります。1つ目は現状把握と目標設定、2つ目は活用を減らす媒体選定、3つ目は有料媒体の活用を減らした分の代替案の検討、4つ目はスケジューリングです。それぞれのポイントを解説いたします。現状把握と目標設定現状把握では、現在どの媒体に年間どれくらいのコストをかけているのか、また各媒体で何名くらい採用ができているのかを把握します。事業所によって一つの媒体に偏っている場合もあれば、複数の媒体から満遍なく採用をしている場合もあります。例えば、求人広告に年間80万円で5名の採用、スカウトに年間40万円で2名の採用といった形でリストアップします。こうすることで、各媒体の効果とコストを確認することができ、コストを削減する際の材料になります。目標設定とは、年間の採用コストをどこまで下げたいかという目標を指します。例で挙げた内容からコスト削減を考えると、年間40万円を削減する目標を設定した後、削減する媒体を決めます。スカウトはそのままで、求人広告から40万円減らす方向で動く際、求人広告経由での採用数が2人~3人減ることが予想されます。そのため、無料媒体や他の施策で2人~3人採用する必要が出てきます。それを具体的な案に落とし込むことで、採用コストを減らすための動きが取れます。このように、有料媒体を闇雲に減らすのではなく、活用を抑える媒体を決め、段階的に減らすことが大切です。また、優先順位を決めて減らしていくことも重要です。活用を減らす媒体選定現状把握と目標設定が完了したら、次は活用を減らす媒体を選定します。媒体選定をする際に考えなければいけないポイントは、媒体選定の軸を定めることです。シンプルに1人採用するのに最もコストがかかっている媒体を減らすのか、それとも入職後の離職率も含めて検討するのか、成果報酬型は残していくのかなどです。軸が定まらないと、どの媒体から活用を減らすのか決まりません。何も考えずに媒体を減らしてしまうと、確かにコストは削減できたものの、採用の根本的な目的を果たせない可能性があります。1人採用するのにかかっているコスト、離職率や入職後の勤務態度といった人材の質の観点も入れながら軸を定めることが良いでしょう。各媒体経由で入職した人のその後まで考慮して、検討するのは手が回らない...という方は、成果報酬型の有料媒体を絞ることから始めるのが良いでしょう。背景としては、求人広告より結果が分かりやすく、大きなコストを削減できるためです。求人広告は年間予算を20万円増やしたから採用が増えるとは限らず、逆に減らしても効果が変わらないケースもあります。そのためスカウトや人材紹介から減らしていった方が効果が分かりやすく、シンプルなのでぜひ検討してみてください。有料媒体を減らした分の代替案の検討前述の通り、有料媒体の活用を減らすと採用数が減少します。しかし、年間の目標採用数は決まっているため、採用数が減った場合は代替案を考える必要があります。メインは、無料媒体や無料施策での採用促進となりますが、有料媒体の使用を継続する方向でも費用を削減することができます。例えば、人材紹介よりもスカウトの方が安いので、切り替えるだけでコストを抑えることができます。無料媒体や無料施策での採用促進については、後述の「無料媒体や無料施策で採用を促進する方法」の章で詳しく解説いたします。スケジューリングスケジューリングは、削減すると決めた媒体をどれくらいの期間で減らしていくかを決めるものです。有料媒体の活用を一気に減らしてしまうと、採用数に大きな影響が出てしまうので、段階的に減らすことをおすすめしましたが、段階的に減らす時期をある程度決めることが大切です。無料媒体や無料施策の成果とも関係しますが、例えば4月から採用スタートして、10月までには紹介会社経由での採用を2割減らすなどです。ある程度スケジュールを立てることで、焦らずにコスト削減を進めることができます。【2】無料媒体や無料施策で採用を促進無料媒体や無料施策とは、SNS運用やハローワークへの求人掲載、リファラル採用の強化などが含まれます。有料媒体での採用を抑えた分、他の媒体や施策でカバーする必要があります。そこでメインとなってくるのが、無料媒体です。無料媒体といってもかなり幅広く、SNS運用を通じて発信を行うことや、ハローワークやナースセンターなどの活用が挙げられます。採用ターゲットによって活用する媒体が違うため、事業所の採用ターゲットがどの媒体にいるのか、しっかり精査した上で媒体を選定しましょう。また無料媒体からの採用は時期や地域、求人内容によって効果が異なります。有料媒体のように費用を払えば一定の効果が出るというものでもないため、日々の改善活動を怠らないようにしましょう。もし地方での採用活動やベテラン看護師、介護士の採用であればハローワークがまだ根強い人気を誇っているのでおすすめです。またindeedも多くの人が活用しているため、掲載をして損はないでしょう。特に民間サービスは求人閲覧数などの分析ができるため、求人内容の改善にも役立ちます。気を付けたいのは、SNS運用です。ハローワークは求人掲載を開始して、タイミングが良いとすぐに応募が来ることがありますが、SNS運用は時間がかかります。そのため継続的な運用ができるよう体制を整えるのが良いです。また無料媒体の活用以外でも無料で採用できる施策を講じると良いでしょう。具体的にはリファラル採用やアルムナイ採用といった施策です。リファラル採用の制度を事業所内に周知し、紹介した人、実際に入職した人双方にちょっとしたお祝い金を支給する形で運用している事業所が多いです。例として挙げた媒体や施策を効率的に活用して、有料媒体を抑えることで、採用コストを下げましょう※参考記事:看護師採用で応募を増やすために使える施策アイデア61個【3】離職を減らす最後に離職を減らすことについて解説いたします。採用コストを削減するというテーマでは、多くが有料媒体の利用をやめるという結論が多いですが、同時に離職を減らすという視点も大切です。そもそも、離職が少なければ有料媒体に依存する必要もないのです。ただ医療介護業界は人材の流動性が高く、看護師や介護士はどこも引く手数多なので、不満があると気軽に転職してしまいます。そのため、離職を減らすというのは簡単ではありません。離職を減らすには、離職する理由から考え、そこをカバーできるかということが大切になります。看護師に限った話で言えば、別記事があるのでご覧ください※参考記事:看護師はなぜ辞めてしまうのか?従業員は転居や病気など以外では、不満がある、不安を感じる、挑戦をする時に転職を選びます。給与や働き方への不満、残業時間への不満、キャリアアップが具体例となります。従業員の変化を細かくキャッチし、離職をせずとも不満や不安の解消、また挑戦を支援できないかすり合わせることが大切です。具体的には、入職してから1ヵ月間は、1週間か2週間に1度フォロー面談を入れましょう。細かくコミュニケーションをとることにより、気持ちの変化や状況の変化に気づくことができます。ある程度慣れてきた後も、可能であれば毎月、難しければ3~4か月に1度は面談を行い、事業所に感じている不安やこれからの目標などを話し合うことをおすすめします。そこで出てきた不安や不満には可能な限り対応し、長く勤め続ける意欲に繋げることが大切です。加えて、面談の際に本音を話してもらえるような空気づくりや、日々のコミュニケーションも重要です。心理的安全性が低い状態だと、建前でしか話せず急に退職願を提出されてしまうこともあります。また、離職を減らすには入職前にもできることがあります。それは応募者がしっかりと事業所を理解して入職することです。応募者が事業所の業務や雰囲気などを誤解していた場合は、入職後のギャップを生んでしまい、離職につながります。入職前の選考段階で双方認識を合わせ入職してもらうことで、入職後のギャップを減らすことが可能です。下記参考記事では入職後にギャップを生まないような対策も紹介しているので、参考にご覧ください。※参考記事:入職前キャンセルを減らす対策を徹底解説!まとめ今回は採用コストを下げる方法について解説いたしました。採用コストを下げるといっても、できることは沢山あり、注意ポイントも多く存在します。そこまで手が回らないけれど有料媒体依存の採用活動を脱却したい方は、遠慮なくご相談ください。