看護師の採用において、選考プロセス設計は非常に重要です。プロセスが長すぎると、看護師が他の事業所で決定してしまう可能性があります。一方、短すぎると、看護師への魅力が上手く伝わらず、採用に至らないことがあります。また、応募した看護師について理解が進まず、ミスマッチになる可能性もあります。今回は看護師の選考プロセスの設計について解説していきます。選考プロセスを設計する上で大切な視点選考プロセスの設計において大切な視点が2つあります。1つ目が応募者視点、2つ目が事業所視点です。 それぞれ解説していきます。1.応募者視点応募者視点とは、選考を受ける看護師の視点のことであり、応募者にとって選考プロセスが適切かどうかを考慮します。前述の通り、選考プロセスが長すぎると、選考を受ける心理的ハードルが上がってしまったり、時間がかかるため他の事業所に決まってしまう可能性が高くなります。また、仕事をしながら転職活動をしている看護師は、都度休みの調整が必要であるため、入職までに時間がかかる場合があります。逆に、選考プロセスが短すぎる場合、看護師は事業所について理解が深まらず、入職したいという気持ちを高めることが難しくなります。そのため、選考プロセスを設計する際には、求職者視点を欠かすことはできません。2.事業所視点事業所視点は、選考を実施する事業所の視点のことで、事業所にとって選考プロセスが適切か否かを考えます。 事業所も選考を実施するにあたり、時間をかけて応募者を理解し、魅力づけを行う必要があります。つまり、時間をかけすぎると他の業務に影響が出てしまうケースや、短すぎると応募者について理解が深まらず、ミスマッチになってしまう可能性があります。そのため、選考に割ける工数や応募者への理解や応募者の入職意向を深めるために何が必要かを考え、選考プロセスを設計する必要があります。ちょうど良い選考プロセスって?皆さん、ちょうど良い選考プロセスってどんなものだと思いますか?適切な選考プロセスは、応募者が希望するポジションや事業所規模、その事業所の採用状況などによって変わってきます。例えば、応募者が管理職などの役職を希望している場合、通常通りの選考プロセスで問題ないでしょうか?おそらくほとんどの事業所は、役職を最初から担う方に関して、1次面接だけでなく2次面接も実施するでしょう。役職者は広い権限と影響力を持つため、事業所にマッチするかしっかり見極めたいという心理が働くからです。また、採用にかけられる工数がそこまで多くない事業所が、すべての応募者に2次面接を実施するのは適切でしょうか?おそらく面接官の負担も考えると実行は難しいでしょう。このように、応募するポジションや事業所規模などによってちょうど良い選考プロセスは異なります。ここでは、多くの事業所が採用している選考プロセスとそのメリットをご紹介します。応募者が一般職希望の場合一般職の場合は、上記のような選考プロセスを採用している事業所が多いです。応募があった場合は、面接日程を調整し、面接と見学を同日に行い、採否を決定します。この場合、応募者の視点では、1日で選考を完了できる点や、見学を行うことで面接官以外とコミュニケーションが取れたり、事業所の雰囲気を見ることができる点が優れています。事業所の視点では、1日で選考が完了することに加え、面接官と見学を対応する人を分けることで、1人の負担を減らし、他の業務も円滑に進めることができる点や、面接官以外も見学時にコミュニケーションを取ることで、応募者についての理解を深めることができる点が優れています。事業所によっては、2次面接や小論文、適性検査が実施されることもあります。適性検査や小論文は主に大規模病院で実施されており、特に適性検査は配属決定の際に活用されます。適性検査の導入はデータの蓄積ができますが、費用がかかるため、メリットと費用のバランスを考慮して導入することが望ましいと思います。応募者が管理職希望の場合応募者が管理職希望の場合、上記のような選考プロセスを採用している事業所が多いです。一般職との違いは、2次面接の有無になります。1次面接は通常の面接官が行い、2次面接は理事長や院長など、事業所でも経営に近い役職者が対応することが多いです。前述の通り、管理職は事業所にもたらす影響力が強く、ミスマッチになってしまうと早期の離職や現場の負担増加など損失が多くなります。そのため、事業所の理念や価値観に共感し、同じ方向を向いて頑張ってくれる人を採用する必要があり、一般職よりも選考プロセスが1つ増えます。選考プロセスが1つ増えるごとに工数はかかりますが、双方の認識のずれが少なくなり、ミスマッチが起きにくいというメリットもあります。特に、管理職のような今後の事業所運営を左右する人材の採用には、2次面接の実施がおすすめです。その他の選考プロセス選考プロセスについて、面接や見学以外に取り入れているプロセスを紹介いたします。小論文小論文は主に大学病院や公立病院、総合病院などで実施されます。テーマは看護師の仕事に関することや、看護観を問うものが多いです。小論文で合否が決定するわけではありませんが、看護観は特に仕事への価値観が出るため、出題されるケースが多く、看護師理解を深めるための施策として活用している事業所も多いです。適性検査適性検査は主にウェブ上で行われる性格診断のようなものです。適性検査の結果に応じて、適切な配属に活用されたりします。データが蓄積されることで、特定の特徴を持った人が長続きしやすいなどの分析が可能になります。主にグループ病院など資本力がある病院が活用している事例が多いです。ウェブ上で簡単に配信ができるため、そこまで工数がかからない反面、費用がかかるため注意が必要です。職場体験職場体験は、面接通過後に半日〜3日程度、実際の業務を見学・体験してもらうことで、双方のミスマッチを減らす目的で実施されます。職場体験は、事業所視点でも応募者視点でも数日間にわたり拘束が発生するため、良い人を少数採用したい場合には向いていますが、大量採用にはあまり向きません。また、応募者が就業中の場合、日程調整が難しいケースもあるため、他の選考プロセスでミスマッチを減らす方向で考えた方が良いかもしれません。筆記試験筆記試験は主に企業で実施されるケースが多いです。内容はSPIと呼ばれるテストが活用されることが多く、適性検査と違い学力や一般教養が求められます。大企業が実施していることが多く、医療機関や介護施設では一般的ではありません。また筆記試験は看護業務や介護業務とはほとんど関わりがないため、特別が事情がない限り実施はする必要はないと思います。オファー面談オファー面談は2次面接とは違い、事業所側から面接通過後に、雇用条件などの細かい条件を改めてすり合わせるために実施されることが多いプロセスです。ほぼ採否が決まっており、最後に双方認識の違いや確認事項が無いかチェックする意味合いを持ちます。また接触機会を増やすことで応募者の離脱を防ぐことができます。もし余裕があれば、採用通知を直接行う場として設けても良いかもしれません。まとめ今回は看護師選考プロセスについて解説いたしました。医療・介護業界の選考プロセスは、一般企業よりも短い傾向があります。業界全体で売り手市場、また専門職の採用なので、看護師経験が重視され、問題が無ければ採用がでる傾向があります。ただ採用は一歩間違えると、事業所にデメリットをもたらすこともあります。そのためしっかりと採用ターゲットを絞り、訴求ポイントを設計し正しい方法で採用を進める必要があります。ぜひ今回の記事を参考に選考プロセスを見直してみてください。