介護老人保健施設(以下、老健)は看護師や介護士のみならず、リハビリスタッフ、ドクターなど様々な職種の方が活躍されている施設形態です。多職種が活躍する場において、ご利用者さんの在宅復帰に向けたチームケアを遂行していくためにも、適切な人材を採用することはとても重要です。しかし、採用人数が増えれば増えるほど、かかる予算や気にすべきポイントが増えていきます。そこで今回は、老健における、介護士、看護師採用にフォーカスし、採用戦略について解説していきます。介護老人保健施設を取り巻く状況についてまずは、老健の事業所数や職員数について見ていきます。施設数の推移参考:介護サービス施設・事業所調査の概況こちらは厚労省が出している調査結果をもとに、老健の事業所数の推移をグラフにしたものです。2012年~2017年までは増加傾向でしたが、以降はほぼ変わらないもしくは若干減少しているのが分かります。介護老人保健施設で働く介護士・看護師数参考:介護サービス施設・事業所調査の概況続いては老健で働く介護士・看護師数の推移を表したものです。こちらは概ね横ばいですが看護師数は少し減少傾向にあります。人口減少に伴い、従事者の母数はこれから減っていくため採用競争は激しくなっていくことが予想されます。求職者から見た介護老人保健施設の特長続いて、老健が持つ特長についてです。採用活動を行っていくうえで、他の施設形態と比べて、求職者から魅力的に見えるポイントは何か、不安に感じやすいポイントは何かを理解しておくことはとても重要なことです。これらを理解し、求職者に寄り添った情報を伝えられるように工夫することで、施設への興味・関心につながります。求職者から魅力的に見えるポイント、求職者が不安に感じやすいポイントについて解説していきます。また、職種ごとに推していきたいポイントも併せて解説していきます。介護士・看護師から魅力的に見えるポイントまずは、求職者となる介護士・看護師の方々から魅力的に見えるポイントについてです。・様々な分野の知識や経験を積むことができる老健で勤務することによって、施設での業務経験のみならず、多職種連携、在宅の知見など様々な分野の知識や経験を得ることができます。老健では、介護士、看護師、リハビリ、医師などの専門スタッフと連携して業務を行う機会が多く、多職種の専門領域を学びながら自分の職種の専門スキルを向上させることができます。介護や医療、リハビリに関する知識などを同時に学ぶ機会もあるため、自分のキャリアに活かすことができます。よりスキルアップして専門知識を広げていきたい方にとって、大きな魅力となるため、積極的に求職者へ伝えていくことが重要です。また、最終的には在宅に移行していくため、在宅に関連する知見も手に入れることができます。そのため、在宅に興味のある看護師・介護士の方には、在宅との関連性を訴求するのもおすすめです。・他介護施設よりも給与が高い傾向日勤のみの介護施設(デイサービスなど)やオンコール対応がある介護施設(特別養護老人ホームなど)と比べて、夜勤がある分給与が高い傾向があります。夜勤がある分大変に感じる方もいますが、急性期病院のように夜間に救急車が何台も入ってくる夜勤とは違うため、病院の夜勤はきついけど、老健の夜勤なら大丈夫という方も多くいらっしゃいます。もちろん加算によって差があったりするため、全ての老健の夜勤が楽といったことはありませんが、常に緊張感とバタバタ感があるような状態が続くわけではないため、比較的老健の夜勤の方が気が楽といった方は、病院からの転職でも給与を大きく落とさずに済むため、給与面の訴求もしっかりと行うと良いでしょう。求職者が不安に感じやすいポイント次に求職者が不安に感じやすいポイントです。不安を軽減するための伝え方やポイントを解説していきます。・利用者さんの入れ替わりが激しい特に老健未経験の方で、他の施設形態からの転職を考えている方などの中には、利用者さんの入れ替わりの激しさに不安を感じる方もいらっしゃいます。特に超強化型や在宅強化型の老健の場合、在宅復帰率やベッド回転率が高いため、人員体制はしっかりしているものの、利用者さんの入れ替わりは激しいと思われます。利用者さんの情報に関する申し送りのフォーマットを作成することや、入居から退去までの流れを一元化することなど、既存職員も働きやすい環境を整備することで不安を緩和することができるかもしれません。また、入れ替わりによって、様々な利用者さんを対応するということは、その分多くの経験を積むことができるため、スキルアップにつながるという点を求職者に伝えていくことも重要です。実際に働いている職員の声や想い、病院などの他の施設形態から転職してきた人が入職後にどう感じているか、などをインタビュー記事や動画として発信することで求職者の不安の緩和につながるかもしれません。・夜勤の体制に不安を感じる求職者の中には、そもそも夜勤があることに不安を感じる方もいらっしゃいます。その理由としては、夜間時は日中と比べ、施設全体で勤務する職員数が少なくなるため、夜間の体制面に不安を感じやすいという点にあります。老健は入所型の施設であるため、夜間勤務はとても重要なもので必要不可欠です。求職者の不安を緩和していくためには、夜間勤務の重要性を伝えることやOJT体制の整備、緊急時の動き方の明確化など、職員が安心して働ける環境を整備し、伝えていくことが大切です。加えて、他施設形態、例えば病院や有料老人ホームとの夜間勤務の違いを説明するコンテンツがあっても良いでしょう。・多職種との連携が上手くできるか不安多職種と連携を上手くできるかどうか不安を感じる方もいらっしゃいます。専門用語や専門職としての視点など、自分の専門外の分野についても、ある程度の知識が必要になります。特に看護師は介護スタッフから、利用者さんの体調の変化について共有をもらい、リハビリスタッフに機能改善について相談したり、医師と連携して介護スタッフに感染対策の指導を行ったりなど、医療と介護をつなぐような存在となります。職員が一人で悩みや問題を抱えないよう、定期的な面談や分野ごとの研修といったサポート体制の構築が重要です。また、職種間でサポートしやすいように合同での研修などお互いにサポートしやすくなるような工夫も大切です。サポート体制がしっかりと整備されている場合には、求職者への大きなアピールポイントにもなるため積極的に求職者へ伝えていくことが良いでしょう。職種ごとに推したいポイント続いて、看護師・介護士の職種ごとに推していきたいポイントについてです。■看護師の場合・病院からの転職であれば、業務のギャップが少ない老健は業務内容や働き方(日勤と夜勤などのシフト構成)が病院と近く、ジョブチェンジが比較的スムーズです。介護施設で働きながら、医療的なケアを行っていきたいという看護師にとって、老健はとても魅力的です。医師も配置されており、他の介護施設に比べると医師がいることでの安心感もあります。また、老健は看護部があります。看護師の組織があるからこそ、多職種間でのトラブルや問題があった際にも相談しやすい体制があり、安心して勤務することができます。・在宅復帰に寄り添った看護ができる老健では、病院と比べて利用者さん一人一人に合わせた看護を実践することができます。リハビリに励む利用者さんが在宅復帰に向けて、ひとつずつステップアップしていく過程を目の前で見ることは大きなやりがいにつながります。利用者さんの回復を目の前で実感できる看護をやりたい方にとっては、とても魅力に感じるポイントです。・介護施設の中では給与が高い老健は先述の通り介護施設の中では看護師の給与が高いことも魅力です。老健は医療依存度が高く、夜勤があるため、看護師の給与も高い傾向にあります。もちろん、地域や規模、加算によって差はありますが、平均的に給与が高いことは長い目で見て、大きなポイントになるため積極的に伝えていくことが良いと考えれます。下記、厚労省が出している令和2年度介護事業経営実態調査結果をもとに施設形態ごとの常勤換算一人当たりの看護師の給与をまとめたものです。参考:令和2年度介護事業経営実態調査結果グラフを見ると訪問看護を除き、日勤帯のみの施設形態より老健の給与が比較的高いことが分かります。■介護士の場合・医師や看護師が常駐しているので、介護業務に集中できる老健は、医師や看護師が常駐しているため、利用者さんの急変時など、何かあったときにすぐに対応できる環境が整っていることが介護士にとって大きな魅力です。他の施設形態では、特に夜間などは看護師が常駐していない場合も多く、急変時には電話で指示を仰ぐなど、介護士自身で対応しなければならないケースもあり、大きな不安の種となります。老健では夜間帯も看護師を配置しているため、他の施設形態に比べて、緊急時の対応も安心して行うことができ、医療面についての負担が少ない点が魅力です。・特養や介護医療院に比べて平均介護度が低い厚労省の調査によると、老健は特養や介護医療院に比べて平均介護度が低いということが分かっています。そのため、介護士の身体的な負担は特養や介護医療院と比べると少なくなると考えられまこと参考:介護サービス施設・事業所調査の概況大前提、一概に介護度という数字だけで、利用者さんへの介護の大変さを測ることはできません。あくまで一つの指標として、在宅復帰を目指した介護を行う老健だからこそ、介護度が低いという点は求職者へ伝えることで安心感につながる可能性があります。採用戦略に関わらず取り組むべきことここからは、採用戦略について解説していきます。まずは、採用戦略に関わらず取り組むべきことについて解説していきます。1.採用ターゲットの明確化採用ターゲットとは、事業所の状況や強み、周辺の市況を鑑みてターゲットとして狙うべき人物像を指します。具体的には、年齢、人柄、スキル、資格、家族構成、価値観などによって構成されます。例えば、結婚を機に退職する看護師さんがいる場合、同じように近日中にライフステージの変化が訪れそうな人を採用するより、安定的に長く働いてくれる人を優先的に採用していく方針をとるかと思います。その場合、例として40代以降の看護師さんで、すでにお子さんは大きくなっている、看護師経験はあるが現在は家庭両立を考え非常勤で働いている、今後の養育費を考え改めて常勤としてしっかり働きたい人、という採用ターゲットが挙がってきます。また、周辺の事業所や市況を見たときに、同じように40代以降の看護師さんを募集している求人が多く、埋もれてしまいそうな場合は、少し年齢層を上げるか、働き方の柔軟性をもたせて子育て中の方でも働けるようにして30代を狙いにいくことも考えられます。採用ターゲットによって、訴求ポイントや採用戦略が変わってくるので、どんな人を採用したいのかを考えることはとても重要です。2.訴求ポイントの整理訴求ポイントとは、自社が持っている強みの中で、採用ターゲットに合わせてよりアピールする点を指します。例えば採用ターゲットが20代初転職の看護師さんなのにも関わらず、復職しやすい環境を訴求しても響かないでしょう。逆に50代のベテラン看護師さんをターゲットにしているにも関わらず、若いスタッフが揃っているという訴求をしても効果が薄いかと思います。このように自社の強みを並べて、その中からターゲットに合わせてアピールするポイントを絞る必要があります。もちろんすべての強みを訴求することも可能ですが、そうすると求人に書ききれない、結局何が強いのか分からないといったことも発生しうるので、何をアピールするのかを整理しておくと良いでしょう。3.求人の改善どの施設においても、随時求人募集は行っていると思います。求人といってもWeb媒体の求人広告や紹介会社の活用など、多岐にわたります。現在出している求人内容が適切なものであるか、必要な情報はきちんと盛り込まれているかを適宜見直すことはとても重要なことです。下記、最低限掲載した方が良い内容を書いた介護士の求人例となります。訴求などは特に設けていないものですが、まずは募集条件や福利厚生等を具体的かつ網羅的に求人を書くことをおすすめします。■職種 介護職員■雇用形態 正社員■募集人数2名■配属先介護老人保健施設(定員105名、在宅強化型)■応募要件 ≪必須要件≫ 「初任者研修」「実務者研修」の修了者 ※ ヘルパー1級・2級の方もご応募可能です。≪歓迎要件≫ 「介護福祉士」の取得者■勤務時間シフト制(週平均実働40時間)(1)早番 07:30 ~ 16:30(休憩60分) (2)日勤 08:00 ~ 18:00(休憩60分)(3)遅番 11:00 ~ 20:00(休憩60分) (4)夜勤 17:00 ~ 09:00(休憩120分)※時間外労働あり:月平均10時間■休日・31日月→月9日・28~30日月→月8日(シフト制) ※年間休日108日■休暇有給休暇、特別休暇、産前産後休業、育児休業、介護・看護休業■業務内容介護老人保健施設(定員105名、在宅強化型)での介護業務です。・日常生活動作の介助(食事、入浴、排せつ、移乗など)・各種記録の記入(生活記録、ケア計画書など) ・ケアカンファレンスへの参加 ・各種委員会活動(安全対策、感染症対策、身体拘束廃止など)≪1日の流れ≫08:00~ 引継ぎ(夜勤者→日勤者)09:00~ バイタルチェック 10:00~ 入浴介助 11:00~ 昼食準備 12:00~ 食事介助・服薬介助・口腔ケア 13:00~ 見守り・リハビリのサポート 16:00~ 夕食準備 17:00 引継ぎ(日勤者→夜勤者) 18:00~ 食事介助・服薬介助・口腔ケア 19:00~ 見守り 20:00~ 就寝準備(更衣介助・排せつ介助) 21:00~ 就寝・夜間見守り06:00~ 起床・更衣介助07:00~ 朝食準備・食事介助・服薬介助・口腔ケア■給与月給 220,000円〜・月給内訳①基本給 170,000円~ ※基本給は、年齢・経験年数により加算されます。 ②夜勤手当:38,000円(7,600円×5回) ③早・遅番手当:12,000円(1,500円×8回)・別途支給手当資格手当:20,000円(介護福祉士の場合) 住宅手当:家賃の30%(上限20,000円)※1 扶養手当:15,000円(第3子以降、1人10,000円)※2※1 賃貸契約者で世帯主の方 ※2 配偶者不在の場合、第1子より20,000円■昇給年1回(6月)■賞与年3回(6月、12月、期末) ■モデル給与例【28歳介護福祉士/経験7年/入社2年目/夜勤月5回/早番・遅番月8回】①基本給:190,000円②夜勤手当:38,000円 ③早番・遅番手当:12,000円④資格手当:20,000円 ⑤住宅手当:20,000円月給:280,000円※交通費は別途支給(上限30,000円/月)■教育体制<新人研修>入社時研修(マナー、介護基礎技術、実践実習)入社3か月・6か月研修(振り返り・法人理念について・救護訓練・虐待防止・交流会等)<外部研修・外部講師研修> リーダー研修、認知症実践者研修などの外部研修の受講や、医師や大学教授などの外部講師を招いての研修会などを定期的に行っています。ポジションによっては、マーケティング研修・マネジメント研修などにも参加していただくことが可能です。<施設内研修>職員全員が参加出来るよう、年に複数回開催されます。若手職員が講師役を担うこともあり、若手の成長の場にもなっています。<職種別研修> 他事業所と共同し、介護士、ケアマネ、看護師、リハ職等の職種ごとの研修会や情報交換会を定期的に開催しています。異なる場所で働く同職種の仲間と情報交換することで、新たな発見や仕事の広がりや可能性を実感することができます。■福利厚生・社会保険完備(健康、厚生、雇用、労災)・退職金制度有り ・交通費実費支給(上限30,000円/月)・施設外研修参加支援(研修参加費、全額法人負担)・有給休暇取得率80%(令和4年度)・制服貸与・マイカー、バイク通勤可(敷地内、無料駐車場あり)・健康診断(年2回。内1回は腰部レントゲン検査実施)・インフルエンザ予防接種 ・永年勤続表彰 ・職員食堂有り(昼食300円)■ 勤務地 〒 123-4567 ○○県□□市△△■アクセス ○○線「○○」駅下車 徒歩5分■応募から入職までの流れStep1 ご応募『LINE公式アカウント』または『直接応募する』をご利用ください。 折り返しご連絡させていただき、ご面談日時を調整させていただきます。Step2 ご面談(1~2回)応募書類をご持参ください。応募書類:履歴書、資格証、筆記用具※施設内マスク着用必須Step3ご内定採用内定通知書などをお送りいたします。勤務開始日を調整させていただきます。■ ご入職時期について在職中の方は、ご入職時期についてご相談ください。■連絡先医療法人○○会 介護老人保健施設○○▶ TEL:123-456-7890▶ 担 当:○○求人作成の際に気を付けるべきポイント上記を踏まえたうえで、ポイントを後述していきます。求人を作成する際は、採用ターゲットとなる看護師や介護士の悩みにどれだけ寄り添えるかがとても大切なポイントです。求職者が必要としている情報は何かを考え、求人内容に盛り込むことで、不安なことや分からないことを減らすことができ、結果として応募までのハードルを下げることが期待できます。以下にポイントをまとめましたので、ご参考にしていただければ幸いです。・業務の流れの記載1日の業務の流れが分かっていると、求職者の不安の軽減につながります。特に老健が未経験の方を対象に募集したい場合、働き方が分かっているか、分かっていないかで応募ハードルがかなり変わってきます。リハビリなど多職種との連携も多いため、事前に職種別の1日の業務スケジュールがわかっていると、業務のイメージがしやすくなり、不安の軽減につながります。・残業時間の明記月に平均どのくらい残業時間があるかを明記することで、求職者が抱える不安解消につながります。残業時間を明記するかしないかだけでも、施設に対するイメージは大きく異なり、記載がない場合には、求職者が不安に感じる可能性もあるため、明記した方が良いと考えられます。・モデル給与例の記載基本給だけではなく、手当や残業代なども含めたモデル給与例を記載することが重要です。年齢や役職が上がっていくと給与はどう変化していくのかも併せて記載することで、求職者が長い目で見て自分の給与をイメージしやすいようにすることがポイントです。また、初任者・実務者・介護福祉士で給与のベースや資格手当に変化がある場合は、それについても明記すると良いでしょう。・福利厚生を詳細に記載する福利厚生は、自社を他社と差別化するポイントとなります。求職者に伝わりやすいように、できるだけ詳細に記載することが重要です。特に利用条件等がある福利厚生(退職金は勤続3年からなど)は詳細を記載することで、入社後のミスマッチを減らすことができます。・教育体制を詳細に記載する入職後の教育体制はどのようなものになっているのか、研修はあるか、どのくらいの期間で独り立ちとなるかなど、出来るだけ具体的に記載することで、求職者の不安の緩和につながります。【OJTあり】だけでなく、独り立ちまでの流れや勉強会・研修の実施頻度、内容なども記載しておくと良いでしょう。・施設内や業務中の写真や動画の活用上記、施設内や業務中のイメージ写真です。施設内や業務中の写真、動画を活用することで、より職場の雰囲気を伝えることができます。文字だけではなく、写真や動画を活用することで、視覚的に求職者へ施設の魅力を伝えることでイメージを持ってもらうことができます。例えばIndeedであれば、スマホ検索画面上タイトルと一緒に画像が出てくるため、一目見て施設の雰囲気を伝えることができます。・ターゲットを意識した内容になっているかどうか求人票例は情報を網羅的に載せたため、ターゲットに合わせて内容の密度を変えることもおすすめです。例えば、若い方や経験が浅い方をターゲットとしている場合、教育や研修制度などについて詳細に記載することで将来をイメージしやすいものになるように意識することが大切です。また、ベテラン世代の方をターゲットとしている場合は、退職金や再雇用制度などを具体的に盛り込み、いつまで働くことができるのか、長く働いていけるのかなど、求職者自身の環境や状態を想像しながら、情報として何が必要かを意識して発信していくことが重要です。4.カジュアル面談(見学)の導入カジュアル面談とは、従来の面接のような形式ばったものではなく、リラックスした状態のもとで行われる、求職者との懇親会のようなものです。リラックスした状態で行えるため、施設と求職者間での自然体でのコミュニケーションが可能になります。そのため面接→内定→入社という流れだけでなく、面接前後にカジュアル面談を導入するのも戦略に関わらずおすすめです。カジュアル面談に期待できることカジュアル面談はオフラインでもオンラインでも行うことができ、求職者への施設の魅力付けの一環としても、とても有効なものです。期待できることとして大きく下記3つの効果があります。・ミスマッチの防止自然体でのコミュニケーションが期待できるため、結果として、双方の価値観も共有しやすくなり、ミスマッチを防止する効果が期待できます。・転職潜在層にアピールできる転職潜在層とは、転職を考えているが行動に移すことができていない潜在的な層のことです。転職を考えている人のうち、実に7~8割がこの潜在層であると考えられています。カジュアル面談は、履歴書不要でリラックスした状況で双方情報交換ができるため、潜在層の方々にも比較的ハードルが低く、参加してもらいやすいと考えられます。先に繋がりを作っておくことで、実際に転職に動く時期となれば、選考を受けてもらえる可能性が高まります。・応募意欲の醸成求職者自身が価値観や目標を表に出しやすく、求職者からの施設に対する興味や関心を高めることが期待できます。カジュアル面談は、正式な面接の前段階や別ステップとして行っているパターンが多く、場所や時間の確保などの工数はかかってしまいます。しかし、カジュアル面談に期待できることを考えると、必要なものであり、有効的な施策の一つであると考えられます。下記、カジュアル面談について、さらに詳しく解説した弊社のコラムとなりますので、ぜひ併せてご覧ください。参考:応募意欲・内定承諾率を高めるカジュアル面談とは?5.採用サイト採用サイトは採用情報のハブとなるものであり、採用サイトをつくっただけでは認知獲得が進まないのでそれだけで採用ができるわけではないですが、他施策も並行して行うことで大きな成果を生み出します。応募前に8割以上の求職者が採用サイトを見るというデータもあるため、採用活動に注力していきたい事業所にとっては必須となるでしょう。ただ、サイト制作にも費用がかかるため、もし無料で始めたいという方は、engage等を活用してみるのも良いと思います。しかしengageなどの他ツールを使った場合、engageのフォームに従うことになったり、導線を調整できない、コンテンツが自由に追加できないなど、応募率の改善の施策がやりきれないといった問題が発生します。そのため、長く採用を安定化させたいのであれば、早めにしっかりとしたサイトを作って、育てていくことが大切です。採用戦略についてここからは採用戦略について、3つのパターンに分けて解説していきます。採用戦略は、施設を支える人材の採用活動において、求職者に自社を選んでもらうための戦略を指し、採用活動を進めていくにあたり、とても重要なものです。採用戦略パターン① オンラインメインの採用戦略まず1つ目がオンラインに特化した採用戦略です。今や多くの人がスマートフォンを持ち、インターネットを活用する時代となっているため、オンラインでの採用施策を行うことで、より多くの方へ施設の情報を発信することができます。ターゲットとなる層オンラインで採用活動を行う上で、一番のターゲットは20代~30代の若い世代になります。大方予想はできますが、若者の情報収集先はオンラインがメインとなっており、Web媒体の求人広告やアプリ、SNSなど、普段利用しているスマートフォンやインターネットからの情報量が一番多いため、若者を採用したいと考えているのであれば、オンラインでの採用活動は必要不可欠です。オンライン施策例続いて、オンラインで採用活動を行ううえでの施策の一例をご紹介していきます。■SNSの活用SNS採用は、FacebookやX(旧Twitter)、Instagram、TiktokなどのSNSを用いて採用活動を行う施策です。自社アカウントを作成し、自社の魅力が伝わる投稿をすることや自社アカウントを用いて求職者へダイレクトメッセージを送信することなどで求職者へアプローチすることもできます。特に老健が未経験の方によって、なかなか見えない施設内のことや業務内容に関して、SNSを活用して写真や動画を発信することで、施設や仕事の魅力を知ってもらい、応募意欲を高めることができます。そのため、施設の内観はもちろん、看護師の1日や介護士インタビューなど、狙っているターゲットに刺さりやすいコンテンツを発信することで、応募率や閲覧数の向上を期待することができます。参考:医療・介護業界におけるSNS採用の始め方ガイドメリット①若い層を中心に幅広い層からの認知獲得が可能SNSは、今や必須のコミュニケーションツールであり、求職活動において、情報収集のために幅広く活用されています。SNSを通して、情報発信することで、求職者との距離を縮めることができ、またエリアや時間に縛られず広く情報を届けることができます。昔はSNS=若者が使っている、というイメージがありましたが、今では幅広い年代に活用されており、医療介護業界で働く方も仕事探しでSNSを使う人が多くいるため、無料から始められることから積極的に取り入れることをおすすめします。②施設ブランディングにつながるSNSを活用することで、施設のブランディングにつながります。SNSは身近に活用するコミュニケーションツールであるため、施設のアピールポイントや現場の様子を発信するにはうってつけのツールです。より具体的でリアルな情報を求職者へ発信することで、効果的に施設のイメージ定着につなげることができます。③採用コストの削減SNSは、無料で利用できるものが多く、新たな施策として取り入れるためのハードルがそこまで高くないため、採用コストの削減につながります。特にDM機能があるSNSの場合、DMで応募をする方もいらっしゃるため、応募導線の一つとしても機能します。デメリット①工数がかかるSNS運用は工数がかかります。更新する頻度を一定以上に保たなければ、すぐに新しい情報で埋もれてしまいます。また、SNSは自分(施設)と相手(求職者)の双方向のコミュニケーションツールであるため、レスポンスや反応があった場合、対応する必要があります。これら作業がどうしても発生してしまうため、採用に効果を期待できるようになるまでには一定の工数がかかります。②時間がかかるSNSは、効果が出るまで時間がかかる可能性があります。SNS運用は長い目で見て、アカウントを育てていくような感覚で、他施策と並行して気長に運用していくことが重要になります。短期で効果を発揮させることもできなくはないですが、話題性がある投稿を続けるのはプロでも難しいため、中長期的な目線で必要なコンテンツを用意していく方が採用への効果が期待できます。③ネットリテラシーが必要SNSを活用する場合は、炎上のリスクを考えなければなりません。不特定多数の人が閲覧できるため、故意でなくても、発信内容が炎上してしまうケースもあります。せっかく育ててきたものが、マイナスになってしまう危険性もあるため、ガイドラインを設けるなど、リスクヘッジに努めることが重要です。■求人広告求人広告とはIndeedやグッピー、ジョブメドレーのような求人が掲載されている媒体内で上位表示をさせるものと、新聞やチラシなどの紙媒体の広告枠に求人を出すものがあります。オンラインメインの場合は前者のような求人媒体上で自社求人を優先表示させることを指し、コストをかけることで無料で掲載されている求人よりも目立つ場所に掲載されるため、より多くの看護師や介護士の方々の目に入るようにすることができます。また、求人広告媒体によっては特定の職種に特化したもの(PT・OT・STネットなど)もあり、そういった媒体を活用することで、狙いたい職種に限定して広告を出すことも可能です。メリット①低予算で始められる求人広告はリスティング広告同様、自由に予算を設定できるため、低予算でスタートすることも可能です。例えばIndeedの場合は、1日300円で始めることができるため、高い予算をかけずとも広告を開始することができます。②簡単に始められる求人広告と聞いて難しそうという印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、運用に関する手間はかなり省略されており、予算を設定するだけであとは自動で運用してくれる媒体が増えています。IndeedやAirwork、求人ボックスなどの媒体はもちろん、ジョブメドレーでも上位表示ができるなど、簡単に求人広告を出すことができる媒体があり、手軽に転職顕在層にアプローチすることができます。Googleのディプレイ広告やリスティング広告と違って、細かい設定を抜きにして簡単に運用を始めることができるため、始めやすい施策の一つとなっています。デメリット①求人の作り込みが必要低予算で簡単に始められるとは言ったものの、それは他の事業所も同じ条件であるため、単に求人広告を開始するだけだと応募が来ない可能性があります。そのため求人の改善を繰り返し、採用ターゲットとなる看護師や介護士の方々から魅力的に見える求人を作成する必要があります。②成果報酬ではないため、予算だけかかってしまうことがある求人広告は成果報酬型の媒体と違い、応募が来なくてもクリックが生まれれば費用がかかります。そのため、応募が1件もこないのに10万円を消費してしまう、といったことも発生することがあります。■リスティング広告リスティング広告(検索連動型広告)とは、「Google」や「Yahoo!」のような検索エンジンの検索結果画面に掲載されるテキスト形式の広告のことです。下記の画像の赤枠の中がリスティング広告となります。メリット①低予算で広告出稿できるリスティング広告は、基本的に求職者が広告をクリックしたときに費用が発生するため、クリックされた分だけ費用が発生する仕組みになっています。また、広告予算は比較的自由にコントロールできるため、タイミングやニーズに合わせて様子を見ながら運用することが可能です。②見込みの高い顕在層にアプローチできるリスティング広告は、求職者自身がキーワードを入力、検索している際に表示されるため、広告を見る段階での求職者の意欲は高まっている状態といえます。そうしたタイミングで広告を出すことで見込みの高い顕在層にアプローチできる可能性があります。③配信開始や停止・内容の変更をすぐに行えるため、分析・改善がしやすいリスティング広告はリアルタイムで配信を開始・停止でき、内容を変更することもでき、専用の画面上に入力するだけですぐに反映されるため、スピード感をもって広告を運用できます。リアルタイムで広告の成果を確認することもできるため、成果に応じて広告内容やターゲット、予算などを調整することなど、分析・改善がしやすいものとなっています。④検索結果の上位に表示でき、短期間で効果が出やすい傾向にあるリスティング広告は、出稿してから短期間で検索結果の上位に表示できる可能性があります。審査期間はありますが、求職者へのアプローチをスピード感をもってできるため、短期間で効果が出る傾向にあります。デメリット①運用に継続的なコストがかかるリスティング広告の掲載を続けるには継続的なコストが発生します。ターゲットを絞ったり、除外するキーワードを設定したりすることで無駄なクリックを避け、費用を抑えながら運用していくことがポイントです。②潜在層にアプローチしづらいリスティング広告は、関連するキーワードを検索している求職者に対して配信されます。そのため、目的やキャリアが明確になっていない求職者にはアプローチしづらいです。潜在層へのアプローチには、他の手法を併用することでターゲットごとに使い分けることが良いと考えられます。③広告を避ける人もいるリスティング広告を含めたWeb広告を活用する際は、広告を避ける人が一定数いることも頭に入れておかなければなりません。すべての求職者に好意的な印象をもってもらえるわけではないということを念頭に運用していきましょう。■スカウト媒体ジョブメドレーやコメディカルドットコムといったスカウト機能のついた媒体を活用することもおすすめです。求職者のプロフィール、スキル、希望条件などを見たうえで、自社に合うと思った人材へ直接スカウトのメッセージを送ることができます。メリット①自社に合いそうな人材に直接アプローチすることができるスカウトメッセージは求職者のプロフィールやスキル、希望条件などを見たうえで送るため、事前に求職者の情報を見て、判断したうえでアプローチすることができます。自社に合いそうな人物に直接アプローチすることになるため、ミスマッチのリスク軽減にもつながります。②潜在層へのアプローチが期待できる「カジュアル面談の導入」で少し触れましたが、スカウトメッセージを送ることで、転職を考えているが、行動に移せていないような潜在層に自社に興味を持ってもらうことができたり、転職活動を行動に移すきっかけになったりすることが期待できます。③認知獲得に効果を発揮するスカウトを送ることで施設を知ってもらう機会を増やすことができ、知ってもらったうえで詳しい情報を見てもらい、興味を持ってもらえれば、応募に繋げることも可能です。スカウトを継続している時と、していない時で顕著に応募数が違ってくるので、目安として月100~200件ほど送り続けることが重要です。デメリット①工数がかかる多くの求職者の中から、スカウトメッセージを送る相手を選ぶことは、案外工数がかかってしまいます。一人一人個別に文章を考えたりする必要もあるため、手間がかかってしまいます。デフォルトのスカウトを送るよりも、しっかりと事業所の強みを伝えられるスカウトを作った方が返信率は高まるので、工数はかかるものの取り組むことをおすすめします、②オプション費用がかかる場合がある活用する媒体によっては、スカウトメッセージを利用する際に、基本料金に加えてオプション料金が発生する場合があります。検討するうえでは、サービスの料金を事前に細かく確認することが大切です。③適当なスカウト・求人では応募がこないスカウト媒体だけに限った話ではありませんが、テンプレート通りのスカウト文や求人では施設の魅力を上手く伝えることができず、応募獲得につなげることが難しくなります。求職者との初めてのタッチポイントになる可能性が高いため、質の高いスカウト・求人が必要になります。オンライン戦略例オンラインに特化した採用戦略の一例をご紹介していきます。施設の状況によって戦略は変化していくため、あくまでも一例として参考にしてみてください。〇想定・課題:人材紹介に依存しており、採用コストが上がっているので抑えたい・理想:できれば若い看護師、介護士の方からの応募を集めたい①人材紹介以外の経路で採用できるようにすることでコストを削減するまず初めに、コストを削減させるための施策を実行します。例えば、スカウト媒体やリスティング広告を活用することなどです。スカウト型採用やリスティング広告は、人材紹介よりもトータルでコストを安価に抑えつつ、無料施策と比べて効果が得られるまでのスパンが短い場合が多いため、スカウトや広告で採用することができれば、採用コストを抑えつつ必要応募数を担保することができます。②直接応募を増やす①と並行して、直接応募を増やすための施策を実行します。具体的には、採用サイト制作や求人の改善を行っていくことです。先述のとおり採用サイトは情報のハブとなり、各施策と相乗効果を発揮します。また求人に関しても一度で完璧なものができあがる可能性は低いため、改善を重ねる必要があります。これらを地道に実行していくことで、直接応募の獲得できる確率があがっていき、実際に獲得できた際には、削減できたコストでさらに直接応募を増やすための施策に回すことも良いかもしれません。また、無料で求人情報を掲載できる媒体(Indeedや求人ボックス等)を併せて活用することで、その媒体を利用している求職者にもアプローチすることが可能です。施策を実行し、結果を分析、改善していくことで、魅力的な情報発信ができるようになり、直接応募を生み出す採用活動の実現に近づくことができます。③媒体からの採用率を下げる直接応募が獲得できてきたら、さらに加速させるための施策を打ちます。具体的には長期的に直接応募に寄与する施策です。例えばSNSの活用や採用サイトのさらなる改善、採用コンテンツの作成があたります。SNS等を活用し、施設に関する情報発信や宣伝・広報を行うことで求職者や同業者とコミュニケーションを取りながら、自社の認知拡大をさらに促進することができます。また、従業員インタビューや新卒エントリー、会社説明資料などの採用コンテンツを増やしていくことで、さらなる採用強化を図り、媒体の活用率を下げ、採用にかかるトータルコストを下げます。加えて、リファラル採用などにも力を入れて、スカウト媒体や求人広告を使わずとも安定的に応募が来る状態を生み出します。採用戦略パターン② オフラインメインの採用戦略続いて2つ目がオフラインに特化した採用戦略です。オンラインでの採用活動が主流となっているため、オフラインでの採用はある程度ターゲットが絞られてしまいますが、求職者へ施設の雰囲気や魅力といった情報を密度濃く、直接的に発信することができます。ターゲットとなる層オフラインで採用活動を行うことによって、事業所周辺に住む方やオンラインに慣れていない年代の方に向けた採用ができます。施策例で後述しますが、オフラインでの採用活動は対面式のものなど、求職者へ直接的にアプローチできるものがほとんどです。例えば、ポスティングや交流会は地域の方へアプローチがしやすいです。オフライン施策例続いて、オフラインで採用活動を行ううえでの施策の一例をご紹介していきます。■リファラル採用リファラル採用とは、職員や職員の知人からの紹介によって人材を採用する方法のことです。組織と職員もしくは職員同士のネットワークを活用することで、質の高い人材確保、ミスマッチのリスク軽減が期待できます。老健は比較的規模が大きい施設が多く、職員数も多いため、リファラル制度上手く運用することができれば大きな効果が期待できます。一度リファラル採用が回り始めれば、様々な職種で応募が生まれてくるため、オフラインメインで進める場合は早めに着手することをおすすめします。メリット①採用コストや工数の削減につながるリファラル採用は、一般的な求人広告などに比べて費用対効果が高いです。職員のネットワークを活用しているため、採用広告費や外部業者への費用を抑えることができます。また、採用プロセスを簡略化できるため、採用担当者の工数削減にもつながります。②転職市場外の人材にもアプローチできる職員のネットワークを活用するため、通常の求人媒体や広告ではアプローチできない、転職市場外にいる人材にアプローチできる可能性があります。また、本格的に転職活動を行っていない方でも、知り合いからの紹介をきっかけに自社に興味を持ってもらいやすいというメリットがあります。③ミスマッチや早期離職のリスク軽減職員からの紹介であり、採用前からすでに一定の情報・信頼がある状態のため、ミスマッチのリスク軽減や組織が求めている人材の確保が期待できます。参考:知ってるけど難しい!リファラル採用の方法と意識すべきポイントデメリット①不採用時のケア仮にリファラルで応募した求職者が不採用になってしまった場合、紹介者してくれた職員との関係性には注意が必要です。当然ながら、紹介してくれた職員は求職者の知人であるため、適切なフォローを行わなければ、関係性が悪くなってしまう可能性があります。不採用になってしまった理由や感謝の気持ちを伝えることなどがとても重要です。また、せっかく紹介してくれたのであれば、採用するためにも、組織が求める人物像の明確化や一定の基準を設けたうえでのリファラル採用を行う必要があります。他業界では、【ごめんなさい食事制度】など不採用になってしまった際のフォローを積極的に行う企業もあります。②インセンティブ目的の紹介が発生する場合があるインセンティブとは、紹介してくれた職員や紹介を受けた応募者へ支払われる対価のことで、現金支給や現物支給など様々な形式があります。リファラル採用を促進する上で、インセンティブを設ける事業所も多いでしょう。ただ、このインセンティブが目的である場合、応募者の意欲や志望度が低い可能性があります。リファラル採用成功のためにも、組織が求める人物像の明確化や適切なインセンティブの制度設計などを行っていく必要があります。■ポスティングポスティングとは、採用のための求人チラシや手紙を住宅のポストに投函し、集客につなげる手法のことをいいます。介護施設は比較的住宅が多い場所で運営されているケースがあります。近隣や周辺の住民からは施設を認知してもらえていることも多く、直接ポスティングを行うことで、すでに自社を知っている方々にダイレクトにアプローチできることが魅力です。メリット①新聞をとっていない世帯にもアプローチが可能近年は新聞の購買者が減少しつつあり、折り込みチラシなどでは多くの層に求人情報を届けることが難しくなっています。ポスティングは住宅のポストに直接投函するため、新聞を購買していない世帯にも配布することが可能です。②潜在層へのアプローチが期待できる現代は求職者自身が情報を取捨選択する時代です。そのため自社について知らない潜在層へ直接的なアプローチを行う必要があります。ポスティングを行い、配布物を実際に手に取ってもらうことで、自社に興味を持ってもらうきっかけとなる可能性があります。③ターゲットを絞って宣伝できるポスティングは、主に「ローラー配布」と「セグメント配布」という2種類の方法があり、それぞれ以下のような違いがあります。ローラー配布:指定されたエリア内にあるほぼすべての住宅に配布セグメント配布:マンションや一戸建てなどに対象を絞って配布より多くの人へ宣伝をしたい場合はローラー配布が適していますが、セグメント配布を行うことで、ターゲットを絞ってアプローチすることが可能になります。デメリット①適切にやらないと、違法行為になる可能性があるポスティングという行為自体が違法なわけではありませんが、やり方によっては法律違反となってしまう可能性があるので、注意が必要です。例えば、ポストが住宅の敷地内にある場合、ポスティングのために無断で敷地内に入ると、「住宅侵入罪」となってしまう可能性があります。また、ポスティング禁止の張り紙がしてある住宅へのポスティングも、迷惑条例などに触れてしまう可能性があります。②外注の場合、業者選びに注意する法律や条例違反にならないようにするためには、外部の業者に依頼するのもおすすめですが、業者選びには注意が必要です。悪質な業者であれば、法律に触れるようなポスティングをする可能性もあるため、委託先の選定は慎重に行う必要があります。■採用イベント自社で開催する勉強会や施設見学会やイベント会社が開催する採用フェアなどを通して、求職者との接点をつくりにいくことを指します。多くの求職者と直接接点を持てる絶好の機会であるため、上手に活用することで自社の認知拡大、ターゲット人材の確保が期待できます。また、日々変化する採用状況や目的に合わせて参加・開催することができることも採用イベントの魅力です。採用イベントには下記のような種類があります。①会社説明会会社説明会は、多くの求職者に向けて施設の情報を伝えるイベントです。大きく分けて他社と合同で行う説明会と自社だけで単独で行う説明会の2種類に分けられます。自社に興味を持っている求職者とより密接に関わりたいのであれば単独説明会、より多くの求職者と関わり、認知拡大を目指すのであれば合同説明会といったように、目的によって使い分けることが重要です。②フェアイベントへのブース出展フェアイベントは複数の企業が合同で開催する転職者に特化したイベントです。業界や地域、施設形態に特化したものなどがあり、会社説明会よりもカジュアルな印象であることが特長です。多くの求職者と出会うチャンスがあり、自社が求めるような求職者と出会えた場合には、その場で選考案内を行うことができるため、スピード感をもって採用につなげることができます。③見学会・職員交流会職員交流会は、施設の職員と求職者との交流を図るイベントです。組織に対して興味を持ってもらうことが目的のため、他の採用イベントと比べて、比較的リラックスした雰囲気で行われます。求職者と対面でコミュニケーションを取ることで、組織について、より詳しく知ってもらえます。また、職員自らが現場のリアルな話を求職者へシェアすることで、職場の雰囲気や魅力もより伝わりやすくなります。メリット①多くの求職者と出会える特に複数の企業で合同開催する採用イベントの場合、自社を知らない求職者層も参加する可能性があるため、施設の認知拡大のきっかけになります。自社だけではアプローチできなかった求職者と接点を持つことができることも大きな魅力です。②ダイレクトにやり取りができる採用イベントでは、求職者と直接的にコミュニケーションを取ることができます。Webサイトやパンフレットの情報だけでは分からない施設の雰囲気や価値観などを伝えることができるため、求職者からの興味関心を得ることが期待できます。③求職者の印象に残りやすい採用イベントを通して、施設の担当者自身から、直接求職者へ施設の説明や働く魅力を伝えることで求職者の印象に残りやすいです。イベント参加後の応募率も、通常の採用手法よりも高くなることが期待できます。④応募段階でのミスマッチのリスクを軽減できる採用イベントを行うことで、応募前段階で自社が重要視している点を求職者へ伝えることができます。例えば、企業理念や組織の価値観を大切にしている施設は、採用イベントで理念や価値観の説明を行うことで、入職後のミスマッチのリスク軽減につながります。デメリット①人員や工数が必要イベントに参加する際は、人員や工数が必要になります。イベントによってはブースの装飾や配布資料の準備なども必要となり、運営スタッフもイベント日程分だけ必要となるため、人手と準備の時間がかかってしまいます。②費用がかかる開催・参加するイベントの大きさ、ブースの大きさ、エリアによって変化しますが、小規模なイベントで20~30万円、大規模なイベントで50~100万円、装飾品の作成や備品のレンタル費で10~30万円程度の費用がかかってしまいます。成果型ではなく、基本的に参加が確定した時点で発生するコストであるため、費用対効果の検討、適切な採用イベントの選択が重要です。社内で勉強会や見学会を実施するにしても、職員の人件費分がかかります。オフライン戦略例オフラインに特化した採用戦略の一例をご紹介していきます。施設の状況によって戦略は変化していくため、あくまでも一例として参考にしてみてください。〇想定・課題:人材紹介への依頼やスカウト媒体を使っても応募が来ない・理想:近くに住む看護師、介護士の方から応募が欲しい①イベントや合同説明会への参加で母集団獲得求人改善や諸々の準備ができている前提で、母集団を獲得するためにイベントや合同説明会に参加します。そうすることで仕事を探している求職者との接点をもつことができ、応募獲得につなげることができます。特にオンラインに慣れていない方の参加も見込めるため、これまでアプローチできなかった層との接点を持つことができます。②ポスティングや看板広告、チラシの掲載など、イベントに来ない層へのアプローチ①と並行して、イベントに来ないような求職者との接点を持つ施策を実行します。具体的には、ポスティングや看板広告、チラシの掲載などが挙げられます。常にイベントが開催されるわけではないので、①の施策と並行して常時募集していることを発信する必要があります。予算に応じてポスティング等の施策を行うことで、イベントがやっていない時期やイベントに来ない層へのアプローチも可能です。予算がかけられない場合は、まずは施設前にチラシを掲載するなどから始めても良いでしょう。③リファラル採用の促進リファラル採用を促進することで、さらなる応募獲得を狙います。運営している施設で働いてる看護師や介護士の方の友人であれば、通勤できる範囲内に暮らしている可能性が高く、また友人経由で訴求することができるため、とても効果的です。特に生の情報を伝えることができるのは、リファラル採用の一つの特長となります。また、介護老人保健施設は働くスタッフの数が多いため、小規模事業所に比べてリファラル採用が回りだしたときの効果が大きくなります。まとめ今回は、介護老人保健施設にフォーカスした採用戦略について解説しました。利用者さんの在宅復帰という一つの目標に向かってチームで動いていくためにも、介護士・看護師・リハスタッフなど多岐にわたる職種で、施設の方向性に合致した適切な人材の確保は必要不可欠です。採用活動を成功に導くためには、状況の把握、試行錯誤のもと、施策の運用を行っていかなければなりません。自社が求める人物はどのような人か、どのような施策が有効的かを考え、採用活動を進めていくことが重要です。最後までご覧いただきありがとうございました。今回の記事が皆様の採用活動を進める一助となれば幸いです。