こんにちは!WELLNOVA編集部です!今回は看護師の離職理由について看護師1000人以上のキャリアサポートをした担当が解説していきます!看護師の離職は事業所運営に大きな影響を与えます。大病院でも小規模施設でも離職はいずれ確実に発生します。特に、「同僚や先輩が辞めるから自分も辞める」という悪循環は、コロナ禍で顕著になりました。これは大病院に多く見られる現象で、大学病院の大量離職がニュースにもなりましたね。「退職が止まらない…」「今後の離職防止につなげたい…」そんな課題を抱える皆様に向けて、この記事では看護師の離職理由の全貌をわかりやすく解説していきます!1.看護師の離職が止まらない理由とは・・?看護師は、社会の健康と福祉を支える非常に重要な存在です。しかし、離職率の高さは業界全体の課題となっています。看護師が離職をしてしまう理由はいくつか存在しますが、本記事では2つの構成に分けて解説していきます。前半に業界構造という大きな課題を解説、後半にそれぞれの看護師がどういう理由で転職をしたかという詳細を解説していきます。業界全体としての課題は、1.医療業界の人手不足と業務負担の集中2.圧倒的に売り手市場であること3.価値観・働き方の多様化に対応できていないこと4.給与の低さと評価制度の不透明さがあげられます。まずは医療業界の人手不足と負担の集中から解説していきます。・医療業界の人手不足と業務負担の集中なぜ人手不足が解消されないのか?理由は高齢化の進行です。2025年には、団塊の世代が75歳以上となり、医療・介護の需要が大幅に増加すると言われています。しかし、看護師の供給はこの需要増加に追いついておらず、慢性的な人手不足が深刻化しています。特に都市部では、人口10万人当たりの看護職員数が全国平均を下回る傾向があり、地域間での人材偏在も問題となっています。看護師等(看護職員)の確保を巡る状況-厚生労働省しかし、看護職員の確保が進められる中で看護職員の就業者数は増加を続けており、下のグラフからもわかるように、2020年には173.4万人に達しています。。労働者が増加しているにもかかわらず、人手不足が解消されないのは、それだけ医療・介護の現場に対する需要が高まっていることを示しています。看護師等(看護職員)の確保を巡る状況-厚生労働省→教育体制また人手不足による弊害は、現場の教育体制にも影響を及ぼしています。新人看護師に対する教育や研修体制が十分に整っていない現場が多く、OJTに頼るケースが多いです。新人看護師が十分なスキルを身につける前に現場に立たされ、「ついていけない」と感じて離職するケースも多いです。先輩看護師には、日々の業務+教育負担が増加し疲弊してしまい、離職に繋がるので負の連鎖を引き起こしてしまいます。・売り手市場について今後も医療・福祉業界は深刻な人手不足に陥っていくと予想されます。看護師に関しては2025年までに最大で27万人足りなくなると言われており、売り手市場は継続、または激化していくでしょう。売り手市場ということは、看護師を求める事業所(求人)数が求職中の看護師数を上回ることを意味します。つまり、看護師の転職ハードルが下がり、転職が多発してしまう現状を生んでいます。看護師の方々とお話していると、1週間や1か月という早期で離職してしまうケースも珍しくありません。背景を聞いてみると、資格さえ持っていればどこでも採ってくれるから、と話される方が一定数いらっしゃり、実際に採用される実情があります。下記の図は働き方別での有効求人倍率を示しています。2022 年-日本看護協会-看護職の求職・求人・就職に関する分析コロナの影響で落ち込んではいますが、コロナ前は常時2倍以上あり、2021年度でも常勤は2倍近くの倍率があります。・価値観、働き方の多様化について近年、美容クリニックや一般企業に就業希望をする方が増えております。これは以前よりも顕著で、若い世代を中心にSNSなどを通じて魅力を感じ、多くの方が実際に就業されております。病院で長く働くといった価値観はすでに壊れてきているのです。働き方についても同様で、昔は病棟で夜勤をしながら働くことがメインだったのが、日勤常勤が一番人気な働き方になるなど、働き方の多様化も進んでいます。特にワークライフバランスという言葉が浸透し、プライベートを重視したいという方の割合が増えている実感があります。その中で、従来の採用方法、従来の働き方、従来の組織マネジメントを踏襲している組織では、価値観の変化に対応できず、看護師が離職してしまいます。打てる手だてとしては、若い世代に対するコミュニケーションの工夫や、ライフステージに合わせた働き方の調整など、対策は多数存在します。しかし従来のやり方を変えると、短期的にデメリットが発生したり、そもそも変化を嫌う傾向がある方もいるので、なかなか全てを完璧にすることは難しく、理由が分からず離職してしまうといったお悩みを事業所様からいただくケースが多いのが実情です。・給与の低さと評価制度の不透明さ看護師は、命を扱う責任の重い仕事にもかかわらず、給与が他業種に比べて低いと感じる人が多いのが現実です。ただ看護師の給与水準は、他業種と比較して必ずしも低いとは言えません。むしろ、以下資料から読み取れるように平均的な水準か、場合によっては高い水準にあります。しかし、業務内容の過酷さや責任の重さを考慮すると、給与に対する不満が生じることもあります。特に医療・福祉業界は、一般的な事務職やメーカー、IT企業などと比較して昇給率が低いと指摘されています。初任給は比較的高めに設定されている職場が多いものの、経験年数を重ねても大きく給与が上がりにくく、長期的なキャリア設計が困難な点が課題です。また、看護師の収入は基本給に加えて夜勤手当や残業代が重要な要素を占めるため、「夜勤をこなさなければ収入が確保できない」という仕組みが生活面や健康面での負担を増加させています。結果として、夜勤の連続は体力的・精神的限界を生み、家庭生活との両立も困難となるため、離職を考えるきっかけとなります。さらに、昇給や手当の算定基準が曖昧であるなど、評価制度の不透明さも問題です。「リーダー業務を担当しているのに反映されない」「新人指導をしているのに手当がつかない」など、努力が報われないと感じるケースが少なくありません。認定看護師や専門看護師など、高度な資格を取得しても十分な報酬へと繋がらない場合、スキルアップへのモチベーションは下がり、転職を模索する流れが強まります。このように、給与水準への不満と評価制度の不透明さが「将来への不安」を増幅させ、多くの看護師が離職に踏み切る要因となっているのです。2.看護師1000人以上と面談して分かった看護師の離職理由看護師の離職理由は、近年多岐にわたっています。ライフステージの変化や人間関係、残業の多さ、業務のやりがい、キャリアアップへの志向など、看護師が転職に踏み切る理由は一様ではありません。本節では、実際に1,000名以上の看護師との面談を通して得られた、転職理由とその背景を深掘りし、現場での対策ヒントを提示します。これらを把握し、早期の離職防止や職場環境改善に役立てることは、看護師不足が叫ばれる医療・介護業界において非常に重要です。・ライフステージの変化:結婚、妊娠、出産、転居看護師は圧倒的に女性が多い職種であり、結婚・妊娠・出産などライフステージの変化は避けて通れない要因です。これまで夜勤や残業を厭わず働いていた看護師も、出産や子育てを機に「時短勤務」「日勤のみへのシフト」など、柔軟な働き方を求めるケースが増加しています。時短勤務制度の適用範囲が限られていたり、夜勤免除期間が短かったりすると、育児や家庭との両立に強い不安が生まれます。その結果、より働きやすい環境を求めて転職する看護師が後を絶ちません。過去の過酷な勤務体系の記憶が強く残るほど、「このままでは子育てと仕事は両立できない」と判断し、転職を決断する傾向が見られます。人材紹介大手の株式会社エス・エム・エスが看護師1.9万人を対象に行った調査(2023年「看護師の働き方に関する意識調査」)では、約6割の看護師が日勤常勤を希望していることが分かりました。2023年-株式会社エス・エム・エス-看護師の働き方に関する意識調査若い女性が多い職場ではライフステージの変化による働き方の変化が多く発生します。これはライフステージ変化への柔軟な対応が、いかに看護師確保・離職防止に重要であるかを示すデータと言えます。若い女性の多い職場では、ライフステージ変化による就労パターンの多様化は必然的に発生します。しかし、シフト調整などで一時的な負担が増えるとしても、優秀な人材をつなぎ留めることは長期的にみれば有益です。結婚を予定している方や妊娠の可能性を示唆する方に対して、事前にキャリアプランや働き方を話し合い、育児や家庭との両立の不安を解消する取り組みを行うことで、長期就業につなげることができます。・人間関係看護師の転職理由として根強いのが「人間関係」の問題です。実際多くの面談でも最も多く聞かれる悩みは、上司や先輩看護師、主任、師長、施設長、他職種との関係性の悪化です。介護施設の場合には、リーダー職との摩擦や多職種連携の不備が、退職の引き金になるケースも少なくありません。若手看護師から頻出するのが、いわゆる「お局さん」への苦情です。パワハラ的な言動、配慮不足な態度、陰湿ないじめなど、厳しい人間関係が続くと、精神的ストレスが蓄積し、転職への後押しとなります。上席による厳重注意や異動など、明確な対策を取ることで、人間関係改善による離職防止が可能です。働きやすい職場というのは、大部分が人間関係で構成されているので、ぜひ現在の就業環境に問題が無いか、アンケートや個別面談で調査してみてください。人間関係は「働きやすい職場」を構成する大きな要素です。現場の雰囲気を定期的に調査し問題があれば素早く対処することで、職員は「職場は改善に動いてくれる」という安心感を持ちます。実際、人間関係の改善によって転職活動を断念し、長期就業に舵を切る看護師も多く存在します。・残業コロナウイルス流行下では、医療機関・保健所はもちろん、介護施設も対応業務が激増しました。その結果残業時間が慢性化し、看護師の疲弊を招いています。また、コロナ禍以降はリモートワークや時短勤務といった働き方改革が社会的な潮流となり、残業そのものに対する拒否感が増大しています。特に若い世代は「プライベート重視」「ワークライフバランス重視」の風潮が強く、過度な残業に対して厳しい目を向けます。一時的な業務過多であれば適切なフォローで乗り切れますが、慢性的な残業には抜本的な改善策が求められます。改善が見込めない場合、看護師は早期に見切りをつけ他職場への転職を検討します。残業が常態化している職場は、看護師同士の口コミやSNSを通じて悪評が広がりがちです。こうしたネガティブ情報は、採用力低下にもつながります。救急対応や急変対応によるやむを得ない残業は医療・介護現場の宿命であるものです。少しでも負担軽減や個々人へのフォローを行うことで、職場全体の働きやすさが向上し、離職防止・採用強化につながります。もちろん医療機関、介護施設で救急対応や急変対応で残業が発生してしまうことは仕方のないことですし、その対応のおかげで救われた命も多数あります。売り手市場で情報にあふれている状況だからこそ、現場で働く看護師が前向きに働けるよう、残業を減らす取り組みや個々人へのフォローは欠かせない時代となっています。・やりがい看護師は、自らのスキルや専門性を活かし、患者や利用者に貢献することで「やりがい」を感じます。にもかかわらず、希望した部署とは異なる場所に配属される、専門性を発揮しづらい環境下に置かれるなど、モチベーションを低下させる要素があると看護師は転職を選択します。異動や転勤が発生する場合は、対象者の希望やスキル、適性を可能な限り考慮することが必要です。また、異動後も継続的なフォローを行い新たな職場環境へスムーズに馴染めるようサポートすることで、やりがいの喪失と離職を防ぐことができます。看護師が日々の業務にやりがいを感じられるかどうかは、その職場で長く働くか否かを左右します。組織としては、看護師個々人のキャリアプランや希望分野を丁寧にヒアリングし、将来展望と業務内容を紐付けることで、やりがい維持と人材定着を図ることが可能です。・キャリアアップキャリアアップは前向きな転職背景になり、必ずしもネガティブな理由ではありません。専門性を高めたい、より高度な医療スキルを習得したい、異なる事業所形態で経験を積みたいといったポジティブな動機で転職を選ぶ看護師も多く存在します。特に子育てがひと段落した看護師や、若手でスキル志向の強い人材に多い傾向です。キャリアアップ志向の看護師を必要以上に引き止めることは、むしろ逆効果です。現場を円満退職できるよう、上司がしっかりとアドバイスやサポートを行うことで、その看護師が業界内でポジティブな評判を広める可能性が高まります。医療、介護業界で働く人は横のつながりが強いため、ネガティブな情報が広がりやすい傾向があります。看護師や介護士の方のお話を聞くと、過去お勤めであった事業所の悪いところを色々お話されるケースが多く、逆に周りから良い情報を得た場合、その事業所に入る可能性が高まります。看護師間は横のつながりが強く、退職時の印象が職場の評価に直結することを忘れてはなりません。キャリアアップで一度退職した看護師が、スキルアップ後に戻ってくるケースもあります。長期的視点で関係性を築き、個人の成長を歓迎する姿勢を示すことは、職場ブランドの向上にもつながります。ポジティブな循環を生み出すためにも、キャリアアップ志向の看護師に対する誠実な対応が求められます。3.まとめ今回、看護師が「なぜ辞めてしまうのか?」という疑問に対し、業界全体が抱える課題から、個別の離職・転職理由までを詳しく解説してきました。結婚や出産などのライフステージ変化、人間関係の悪化、過重な残業、やりがいの喪失、キャリアアップ志向など、理由は多種多様です。看護師が一人辞めるだけでも、現場には大きな影響が生じます。加えて、新たな人材を採用するには相応の時間、労力、そしてコストがかかります。看護師不足が常態化し、売り手市場化している医療・介護業界において、離職防止と採用強化は不可欠な課題です。 離職理由を正しく理解し、それに応じた改善策を講じることで、看護師が働き続けたい職場環境を整えましょう。ライフステージの変化への柔軟な対応、人間関係改善のための定期的な調査や対話、残業時間削減への取り組み、適所適材の人員配置やキャリア形成の支援など、多方面からのアプローチが求められています。その結果、既存スタッフの定着率が上がり良い評判が広まることで、新規採用にも有利に働くポジティブなサイクルが生まれるでしょう。